外国人労働者受け入れ 電話通報 多言語に対応 長崎県警 通訳介し三者通話講習

 外国人労働者の受け入れを拡大する改正入管難民法の4月施行に伴い、今後、長崎で暮らす外国人の増加が見込まれている。来日後に直面する課題の一つが言葉の問題だ。彼らが安心して生活を送れるように110番や119番通報では多言語対応が進んでいる。
 「私はベトナム人です」「ベトナム語の通訳につなぐのでお待ちください」-。
 外国人の増加を見据え、県警は21日、県警本部でベトナム人の技能実習生を対象にした110番通報講習会を初めて開いた。参加したのは19~33歳の男女8人。今月下旬から島原市など県内外で農業分野への就労を予定し、就労前の日本語習得に励んでいる。
 この日は「手に持っていたバッグを盗まれた」という設定で実習生の一人が110番通報を体験。電話を受けた通信指令課員が、ベトナム語の通訳ができる警察官とも回線をつなぎ、三者通話の方式で「いつ」「場所は」など、ゆっくり質問し、実習生から“被害状況”を聞き出した。
 県警によると、昨年の外国人からの通報件数は216件。ここ5年で約2.5倍と増加傾向にある。現在、語学が堪能な警察官や職員が担う「通訳要員」は108人。内訳は英語63人、中国語20人、韓国語15人-など8カ国語に対応する。本田哲祥通信指令課長は「地域の人も街中で困っている外国人を見かけたら声を掛けて助けてほしい」と話す。
 消防車や救急車を呼ぶ119番通報でも多言語化が進む。県消防保安室によると、県内全10カ所の消防局・消防本部のうち、5カ所でタッチパネルを使って三者通話ができるシステムを導入。残りも大半が検討中という。導入済み5カ所のうち、対馬市消防本部は最も多い15言語に対応する。
 外国人受け入れに関し、各種情報の多言語化だけでなく、生活全般の一元的相談窓口の設置も求められる。県は7月、医療や福祉など生活全般の相談を受ける窓口を県国際交流協会(長崎市出島町)内に開設予定。英語とベトナム語を話せる相談員を常駐させるほか、翻訳機で11言語に対応。離島などに住む外国人の相談は民間の多言語コールセンターを活用する。
 県の担当者は「現時点でどのような相談がどのくらい寄せられるのか分からないが、必要に応じて関係機関と連携して対応していく」としている。
 長崎労働局によると、県内の外国人労働者数は昨年10月末現在で5433人。国籍別ではベトナム1764人、中国1054人-など。

「三者通話」による110番通報を体験する技能実習生(右)=県警本部

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