ゴールデングラブ賞奪回へ―鷹・今宮が向き合うけが防止の取り組みと強い覚悟

ソフトバンク・今宮健太【写真:藤浦一都】

身体のメンテナンスが重要課題「自分の中で考え方も固まった」

 日本を背負う遊撃手へ。「背番号6」を選んだソフトバンク今宮健太内野手。さらなる進化を目指す27歳の今――。

 侍ジャパンの常連でありNPBを代表するショートに成長した今宮。172センチの身長はプロではかなり小柄の部類ながら、高校通算62本塁打を放った。プロでも2016年から3年連続2桁本塁打。ゴールデングラブ5回獲得。ユニホームの上からでもわかる全身バネのような肉体を誇る。

「まぁ本塁打に関しては僕はそういうタイプではない。高校時代も金属バットだったから。プロでも同じチームには柳田(悠岐)さんがいて、見ていると比べものにならない。確実性とスピードを活かしたプレーを磨いていきたい」

 今宮は事あるごとに口にするが、すべてでスケールの大きいプレースタイルは見るものを虜にする

 敵は我にあり。常に故障との戦いである。16年は右肘痛を発症しオフには手術を受けた。現在もたびたび悩まされている。18年はシーズン終盤に下半身を故障、最後まで影響した。

「正直、最初は少しイライラしたこともありました。内容や結果など順調でも故障してしまうこともあった。自分のプレースタイルがどこかで負担をかけているのか、と考えたこともあった。でも現在はある程度、自分の中で考え方も定まったような部分がある」

「年齢的なこともあるし、無理をしたり疲労をためるのが一番良くない。身体の変化も感じる。だから、とにかく身体のメンテナンスをしっかりしようと思う。例えば、ここからウエートトレーニングをしたりして身体を大きくしても、他の部分にも変化が起きる。今のプレースタイルを維持するためにもケアをしっかりするようになりました」

 プロ10年目の27歳。ベテランと呼ぶにはまだ早すぎるが、コンディションで苦労した分だけ細心の注意を払うようになった。ある種、良い意味での開き直りとも言えようか。

派手さはなくとも日本を背負うショートに

「名手」と称される守備でも体に負担がかからない形を模索している。

「特に守備では基本に戻ることを心掛けている。これも自分の身体を考えてのことなんですけど、足をしっかり使って無理のない状態で捕球ポジションに入る。同じように下半身を使って送球へ移る。これが連動してスムーズにできれば身体にはムダなストレスもかからない」

「基本を大事にするというのは、当然のこと。子供の頃から言われてきたこと。でもプロという一瞬の勝負の中で、反応だけで捕球に行き過ぎていたところもあったと思う。身体への疲労も年間を通じれば全然違ってくる。それが打撃や走塁などすべてにおいて好影響を及ぼすと思う」

 三遊間の深い打球に追いつき、強肩を発揮して打者走者を刺すシーンを数多く見た。ファールフライを追ってスタンドへ飛び込んで捕球したこともあった。そういった派手なシーンは減るかもしれない。しかし粛々とアウトを積み重ね、走攻守すべてでチームに大きく貢献する機会が増えることだろう。

 今季からプロ入り以来背負ってきた背番号「2」を変更。アマチュアではショートのレギュラー番号である「6」を選んだ。心機一転だけでなく、日本一のショートになる、という決意表明にも取れるのは気のせいか。

 MLBでは現役引退した今もなお「ニューヨークのショートストップはデレク・ジーター」と言われる。同様に「日本の遊撃手は今宮健太」と語り継がれるようになるため、意志と覚悟は固めている。(山岡則夫 / Norio Yamaoka)

山岡則夫 プロフィール
 1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌Ballpark Time!を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、製作するほか、多くの雑誌やホームページに寄稿している。最新刊は「岩隈久志のピッチングバイブル」、「躍進する広島カープを支える選手たち」(株式会社舵社)。Ballpark Time!オフィシャルページにて取材日記を定期的に更新中。

© 株式会社Creative2