本格的なプロの道へ 目指すは「賞金女王」 女子プロゴルフ 臼井麗香

 昨年7月の日本女子プロゴルフ協会(LPGA)プロテストに2度目の挑戦で合格した臼井麗香が、今年本格的なプロの道を歩み出した。栃木県・鹿沼市北押原中1年の時、12歳10カ月で県知事盃一般女子を制し、最年少記録を樹立、プロ転向後の栃木県女子オープンでは2位に3打差をつける5アンダーと力を見せつけて4年ぶりの女王に輝いた。「シード選手となって、将来は賞金女王」と言い切る女子ゴルファーの挑戦がいよいよ始まる。

 

「ゴルフが面白くなったのはごく最近」

 一昨年のプロテストはファイナルで落選。「人生終わったと思うぐらい落ち込んだ」というほどの試練を味わった。2度目の挑戦となった昨年の舞台は兵庫県のチェリーヒルズGC(6307ヤード、パー72)。初日、2日目と「ピンに絡むが、パットが入らない」。60台をマークする選手が続出する中、「残り2日間、自分のゴルフをするだけ」と自らに言い聞かせた。

 最も大切といわれる3日目に爆発。女子プロテストタイ記録の64をたたき出した。10バーディー2ボギーの内容。半分以上のホールでバーディーをマークし、自己ベストでもあった。86人の挑戦者の中で20位タイまでが合格という関門だが、15アンダー5位タイでの合格と見事に雪辱を果たした。重要なプロテストで、それも最も重要といわれる3日目に記録をたたき出すあたりに大物の片鱗がうかがえる。

 ゴルフクラブを握ったのは9歳の時。「ハムスターを買ってあげる」という祖父・臼井庄一さんの誘いだった。庄一さんは県アマ選手権を2度制しているトップアマ、父親剛さんも高校、大学でゴルフを続けた。そんなゴルフファミリーの一員であっても、まだまだ遊びたい年頃だけに、学校から帰ってから練習場に通う毎日はつらかったようだ。「今となっては感謝していますが、当時は苦痛でした。ゴルフが面白くなってきたのはごく最近です」と振り返る。

 昨年はゴルフダイジェスト誌が主催する「2018ビューティークイーン」に輝いている。同誌の企画「ビューティー」に掲載された49人から読者投票で選ばれるシステム。プロ合格前だったが「去年最もうれしかったのはプロになれたことで、次がビューティークイーンになったこと」と満面の笑みを浮かべる。

 「メークなど美に対する興味もある」という臼井。クイーンになれば、ゴルフ雑誌をはじめ多くのメディアの取材が舞い込むのは当然。今オフは写真撮影などの依頼が目白押し、庄一さんも「ゴルフが仕事なのに、撮影ばかり」とオカンムリ状態という。

県女子オープン、凱旋の舞台に

 1月13日の鹿沼市民文化センターで開催された成人式では、708人の新成人を代表してマイクの前に立ち、「全国で戦うからには絶対負けたくないという想いで腕を磨いてきました。賞金女王になってみせます」と今後の飛躍を誓った。

 プロ合格後の凱旋となった昨年11月7日開催の県女子オープン。舞台はラインヒルGC(6547ヤード、パー72)。「一度も回ったことのないコースなので下見でラウンドしたのですが、本番は違うグリーンで『意味ない』とガックリだった」。でも、そこは実力者。仲の良い先輩の篠崎愛(上三川町出身、宇都宮文星女子高卒。マナGC)とのバーディーラッシュとなった。アウトは共に2アンダーで折り返し、優勝は2人に絞られたが、インは10番パー5をものにすると、3バーディーの33。5アンダー67で3打差をつけて2度目の優勝を果たした。

 ちなみにこの大会は2014年の第5回大会(東松苑GC)で高校1年生だった時に、プロを抑えて、4アンダーで優勝しているゲンのいい試合でもあった。

早々とスイング改造に取り組む

 プロになって初めてのオフは、スイング改造に取り組んだ。プロになったばかりで冒険と思えるが、「常に進化していかなければ」とコーチに全幅の信頼を置いている。「すごく変えています。近代的なスイングになっているはず」と笑みを浮かべる。アイアンの切れは定評があるが、さらに一段上の正確性を手に入れるためという。

 米国の賞金女王に輝いた申ジエとラウンドした時に「機械みたいな正確なショットに驚いた」そうだが、目指すゴルフは「申ジエプラス攻め」という。「ガンガン攻めて、見ていて面白いゴルフ」と言い切る。

 3月末からのステップアップツアーでは「賞金女王争いをしたい。自信はあります」。

 女子プロの黄金世代と呼ばれる畑岡奈紗、勝みなみ、新垣比菜、小祝さくらなどはジュニア時代からのライバルでかなり仲がいいという。“一浪”で遅れをとっているが、挽回には十分な誤差である。

 「今まで支えてもらった家族、応援していただいた方のためにも頑張らねばなりません。そんなに簡単でないのは十分承知していますが、立ち止まっているわけにはいきません。一歩一歩前に進んでいきたい。応援お願いします」と決意を新たにした。チャレンジの年がついに始まった。

 井上孝男・文 / 荒井修・写真

臼井麗香 うすい・れいか 1998年12月7日生まれ。鹿沼市出身。同市北押原中1年時の12歳10カ月で県知事盃一般女子の部を制し、最年少記録を樹立。2018年7月の日本女子プロゴルフ協会(LPGA)プロテストに合格。同年11月の県女子オープンで4年ぶりの優勝を飾った。

(この記事はSPRIDE[スプライド] vol.29に掲載)

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