<レスリング>女子の全日本チームが東京・味の素トレセンで合宿スタート

(文・撮影=保高幸子)

約1ヶ月ぶりに行われた全日本女子合宿

 女子の全日本チームが2月22日、東京・味の素ナショナルトレーニングセンターで今年2度目の合宿をスタート。スウェーデン遠征(クリッパン女子国際大会出場・合宿)から帰国直後のコーチと選手も参加。1月に参加したヤリギン国際大会(ロシア)と合わせ、国際大会で見出した課題に取り組み、アジア選手権(4月・中国)へ向けた強化をする。

 西口茂樹・強化本部長はスウェーデン遠征に監督として同行。カデット世代がジュニアでも勝負できたことを評価し、海外勢の動向やレスリング・スタイルなどもチェック。「外国選手対策の面で収穫があった。(自分が)グレコローマン出身だからこそ、できる指導もあると思う。世界で闘う上で、少しでもプラスになることがあれば、今回に限らず、次回、次々回にわたって伝えていきたい」と、全力で支えるつもり。

 4月のアジア選手権のメンバーについて、笹山秀雄・女子強化委員長(自衛隊)は「選手の気持ちを優先するが、年度始めの大会なので全日本チャンピオンを派遣したい。まず全日本1位の選手に希望を聞いている」と、できる限り1番手選手で臨む方針。「トップ選手の多くは国際大会が久しぶりとなる。アジアには世界のトップの選手も多く、まずアジア選手権で課題を見つけてほしい」と話した。全階級でのメダル獲得が目標だという。

「量も大切だが、中身にこだわりたい」…川井友香子(至学館大)

 昨年の世界選手権2位に続いてU23世界選手権で優勝し、飛躍した62kg級の川井友香子 (至学館大)は「いつも合宿初日は動きが悪く、落ち込んでしまいます」と話し始めたが、「普段やらない選手とスパーリングできることで、所属での手の内を知り合った仲でのものとは違う発見があるし、全日本のコーチからも違う視点からのアドバイスをいただけるので刺激になる」と言い、全日本合宿への意欲は高い。

アジア選手権出場を明言した川井友香子(至学館大)

 全日本選手権を制してから頭に浮かぶのは「どうしたらもっと強くなれるだろう、ということばかりです。全日本を取るまでは、とにかく練習量でした。でもシニアはそれだけではダメなんじゃないか、と思います。みんなより多く練習しても足りない気がする」と模索中。「量も大切。でもそれ以上の中身にこだわりたい」と抱負を語った。

 川井自身はアジア選手権に出場する方向で考えている。「アジア選手権はカデットもジュニアも参加したことがなく、不思議な感じです。チャレンジャーの立場。守るものはないので思い切りやりたいと思っています」との決意を話した。

 今回は若手有望選手も合宿に参加していて、藤波朱理(三重・いなべクラブ)は初の全日本合宿。「憧れの選手がたくさんいて、緊張しました」とはにかんだ。「(須﨑)優衣さん(早大)、入江さん(ゆき=自衛隊)ともスパーリングさせてもらいました。パワーも技術もすべてが上で、当たりまえですが全然かないませんでした。合宿中にいっぱい当たりに行って、近づけるようにがんばりたいです」と意気込んでいる。

「練習は失敗するためにある」…笹山秀雄・女子強化委員長

須﨑優衣(早大)と練習する笹山秀雄・女子強化委員長

 若手の指導に深く携わる吉村祥子コーチ(エステティックTBC)は「去年の世界カデットのチャンピオンで49kg級以上の選手に声をかけ、参加可能だった2選手が参加しています。2024年、2028年のオリンピックに向けて、今の日本を継承していく世代だと思いますので、ここから多くのことを学んでほしい」と期待する。

 練習後半、笹山委員長は「チャンピオンになると守る気持ちが強くなる選手も多い」と課題の一つを話した。「国際大会を見ていて思ったことは、ポイントを取った後が重要だった。取った後に安心して休んでしまうと、接戦になったり、最悪の場合、試合を落としてしまう。力の差があるにも関わらずです。差されたら組み返し、取られれば取り返し、相手を動かして取りに行く、ということを練習から出せるように」と徹底するつもり。

 練習の最後には「今日は組み合って見合う、警戒ばかりで何もしない選手が目立った」と切り出し、「練習は失敗するためにある。警戒しているばかりでは意味がない。自分のものにしていくためにはたくさん試して失敗することが必要だ」と選手たちを激励した。

 合宿は27日まで行われ、合宿中にはメディア・トレーニングやインテグリティ教育の講習も行う予定。


▲補強トレーニングに励む世界チャンピオンの向田真優(至学館大)
▲世界選手権出場を目指す入江ゆき(自衛隊)

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