<再生への視点 統一地方選を前に>・5 対馬市区 複式学級 子ども減少 解消困難 島へ「留学」 受け皿に課題

 「5年は『星ふる夜』、6年は『固い友情』を書きます」-。児童数減で異なる学年が同じクラスで机を並べる「複式学級」がある対馬市峰町の市立西小。書道で担任が5年生にとめ、はねの説明をする間、6年生は黙々と筆を動かし、指導を待っていた。
 国の基準によると、小学校では複数の学年の児童を足して原則16人以下の場合、複式となる。西小5、6年生は計16人。本年度はぎりぎりで複式化が決まった。「2学年の児童に担任が1人。指導が行き渡るよう、学年間を行き来して教育の質を確保する工夫をしている。だが、根本的な解決策は複式の解消」。大浦信之校長はそう指摘する。
 これは同校に限ったことではない。子どもの減少を受け、対馬では学校統廃合が進められているが、それでも現在、市内小中計11校が複式学級を編成している。
 県は複式学級の改善・解消に向け、2014年度から離島への教諭の加配を国に求めているが、実現に至っていない。県教委は複式学級への非常勤講師の配置に取り組むものの、「離島では人材確保が困難。十分に手当てできていない」のが現状だ。
 児童・生徒数が減少する中、島の活力につなげようと、同市教委は島外から児童、生徒を受け入れる「島っこ留学」を15年度に導入した。現在、福岡県から小中学生4人が転入し、里親宅から通学している。市教委によると、新年度は7人の小中学生が島っこ留学で転入し、西小の複式学級は解消する見通しだ。ただ、市内の里親登録は現在、2世帯。預かった子どもの病気やけがへの心配から、受け皿づくりは十分には整っていない。里親の確保ができず、転入を断ったケースもある。受け入れ態勢の充実が課題だ。
 国内には空き家を寄宿舎に改装し、自治体で直営している新潟県粟島浦村のような取り組みもある。対馬と同様に離島の同村は本年度、「しおかぜ留学」で全国から11人を受け入れた。同村教委は「教員の家族を含め、人口が増えると地方交付税が増額される。買い物で島内経済が潤うメリットもある」としている。
 対馬の西小近くで旅館を営む村瀬智哉(としや)さん(58)、英子さん(53)夫婦。17年度から里親となり、実親と市から1人計7万円の委託料を受け、小学生と中学生の計3人を家族同様に育てている。夫婦は言う。「子どもがいない所に島おこしはない」。何より、子どもたちの成長が楽しみ。3人が巣立つまでは里親を続けるつもりだ。

複式学級で書道を指導する教諭(右)。児童のうち手前の縦2列が5年生、奥3列が6年生=対馬市、西小

© 株式会社長崎新聞社