日本高野連が新潟高野連に申し入れた「再考」 投球制限への大きな一歩

新潟県高野連が投げかけた一球から有識者会議が発足へ

 日本高等学校野球連盟(日本高野連)は20日に開いた理事会で、昨年12月22日に新潟県高等学校野球連盟(新潟県高野連)が発表した「今年春の県大会での投球数制限の実施」について審議した。

 1月9日の業務運営委員会、1月24日の全国9地区代表者懇談会、2月14日の技術・振興委員会でも審議されてきたが、選手の障害予防の観点から新潟県高野連に投球数制限の“趣旨そのものや方向性”には賛意を表す意見が出された。

 その一方で、

○部員不足の連合チームが増加し、各校野球部の部員数に二極化が見られ、部員数が20名以下の加盟校数が全体の4分の1を占める現状では、投球数制限に踏み込むのは慎重であるべき 

○タイブレークを規則化した際にも各都道府県高野連、加盟校、日本高野連で意思疎通を図りながら進めてきた。今回のような勝敗に影響を及ぼす規則については全国で足並みを揃えて検討すべきではないか

○専門家の意見も聞き、投手の障害予防について練習、練習試合、公式戦など様々な施策を検討したうえで方向性を示す必要がある

 といった意見が出され、理事会では、春季県大会からの実施については、新潟県高野連に「再考」を申し入れることを決めた。

 ただ、新潟県高野連が一石を投じた内容については、未来の高校野球発展には避けて通れない課題との認識は共通している。そこで、専門家を交えた「投手の障害予防に関する有識者会議」を今年4月に発足させ多角的に検討をしていくとし、同会議のメンバーに新潟県高野連の参画を依頼した。

 理事会後に会見した日本高野連の竹中雅彦事務局長は「球数制限を認めないということではなく、1年間、こういった会議をするので、猶予をいただきたい。新潟県にもそこに入って討議の場に加わっていただきたい」と話し、有識者会議を1年間を目安に行い、答申を踏まえた上で、理事会で施策を検討する考えを示した。

 1年間という期間について竹中事務局長は、「2年、3年とかける時間的余裕はないと思っています。春季大会は新潟では4月下旬からですが、3月から始まる(九州、四国、東京、兵庫など)地域もある」と春季大会が早い地域も考える必要があることを話し、毎年2月に理事会を開催していることからも、その前に有識者会議での答申をまとめたい意向であることを明かした。

『「日本高野連、頑張ってくれよという新潟からのエール」と受け取りたい』と竹中事務局長

 今回の発端は、12月22日に行われた「NIGATA野球サミット2018」(主催・新潟県青少年野球団体協議会)での新潟県高野連の1試合100球の投球数制限の発表だった。

 サミットでは「野球の未来とスポーツマンシップ」をテーマに、新潟からの挑戦として、新潟高野連は春季県大会での投手の投球制限導入の検討を進めていることを発信した。新潟の小学生と中学生の少年野球チーム、新潟県高野連加盟校アンケートでは障害予防の観点からの投球数制限導入に肯定的が85.2%あり、否定的の14.8%を大きく上回った。さらに「障害予防」だけでなく、「選手の出場機会増」も目的の一つになっていることも重要だ。投球数制限で先発投手が途中交代することなどで、出場が少なかった選手にも機会が訪れやすい。

「始めよう! 楽しもう! 続けよう!」をスローガンに「新潟メソッド」の普及をはじめとする新潟県青少年野球団体協議会の取り組みに、新潟県高野連も積極的に関わっていることがサミットの資料を見てもわかる。昨年10月に新潟県で行われた秋季北信越大会では、グラウンド整備中などに、「いいプレーには自然と拍手がわくグラウンドっていいよね。敵味方なく、ね!」とアナウンスされていた。これは新潟メソッドの裏表紙の一文だ。

“新潟から発信していくんだ”という姿勢、取り組み、方向性については日本高野連の理事会や各種会議でも賛意を表す意見が出された。未来の高校野球発展には避けて通れない課題を新潟が取り組んでいることに「日本高野連、頑張ってくれよという新潟からのエール」(竹中事務局長)と受け取っている。取り組まなくてはいけない課題は、新潟がかなり先行して実践しているのが現状だ。あれから、2か月。新潟から全国を動かし、有識者会議の発足に繋がったということは、“一歩前進”と捉えたい。(松倉雄太 / Yuta Matsukura)

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