人権問題 身近に感じて 実名と写真入り冊子【大分県】

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県が作った人権啓発の実名インタビュー集「同じ空の下」

 ハンセン病回復者、生まれつきのあざがある人、性的少数者…。県は偏見や差別に直面する人たちの実名インタビュー集「同じ空の下~15人からのメッセージ」(A4判34ページ)を作った。県民に人権問題を身近に感じてもらうため、大半が県内出身者や在住者で、全員の顔写真を掲載した。3千部を中学校、高校、公立図書館などに配った。

 実名と顔写真の掲載は県の人権啓発冊子では珍しい。人権・同和対策課が「『どこかの誰か』の話に終わらせたくない」と企画した。1人当たり4時間、全体で4カ月かけて職員2人がインタビュー。昨年12月に発行した。

 ハンセン病回復者は、臼杵市出身で国立療養所「星塚敬愛園」(鹿児島県鹿屋市)で暮らす白根九州男さん(83)を紹介。一問一答で強制収容、妻の強制堕胎、家族への差別などの体験談に加え、「人生の大半を奪われ、夢や希望を絶たれた。らい予防法に苦しめられた」といった言葉を伝えている。

 他には▽難病で上半身に生まれつきの大きなあざがある首藤雄三さん(60)=大分市▽女性であることに違和感を持つトランスジェンダーの大住珊士(さんじ)さん(36)=熊本県菊池市▽シリア難民でイスラム教徒のアルダルカザンリー・バラーさん(25)=別府市=ら。被差別部落の出身者、発達障害のある人、在日韓国人、薬物依存の経験者、性犯罪の被害者らも取り上げている。

 インタビューした同課の安倍(あんべ)誠主査(42)も「うつ病経験者」として登場。自殺未遂に至った苦しみを告白し、「病気になりたくてなった人は一人もいない」と語っている。

 一緒に取材した松尾美保課長補佐(59)は「実名と顔写真が出ることに悩んだ人もいたが、『正しい情報を伝えたい』という共通の思いから全員が応じてくれた。人権問題は人ごとと思っている人にこそ読んでほしい」と訴えている。