大坂なおみとバジンコーチの決別は衝撃?自然? 海外メディアの反響は

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写真は決別を発表した大坂とバジンコーチ

2018年「全米オープン」優勝に続く2019年の「全豪オープン」優勝により四大大会連覇という偉業を達成したわずか2週間後に、彼女をここまで急成長させた大功労者として讃えられていたサーシャ・バジンコーチとの決別をTwitterで発表した大坂なおみ(日本/日清食品)。日本国内ばかりでなく海外メディアにも「信じられない」「いったいどうして」という驚愕の声が拡がっている。

■ニューヨークタイムズ:驚くべき発表

2018年の「全米オープン」優勝よりも前から大坂の才能やマルチカルチュラルな存在であることに注目してきた全米の有力紙ニューヨークタイムズは、大坂がツイートした当日に早くも「大坂なおみ、世界ランキング1位に上り詰めた後コーチと袂を分かつ」という記事を上げている。その記事では、大坂は近年の女子テニス界で最も成功した師弟関係の一つを、最も成功している時に突然に終わらせることを発表した、と述べている。セレナ・ウイリアムズ(アメリカ)らのヒッティングパートナーとして活動してきたバジン氏がヘッドコーチを務めたのはこれが初めてだったが、大坂は彼の指導のもとでめきめきと頭角を現し、2018年3月にインディアンウェルズでツアー初優勝。そして9月には「全米オープン」決勝で彼女のアイドルであったセレナを破って優勝し、初のトップ10入りを果たした。決別の理由は明らかにされておらず、バジン氏にコメントを求めても返答はなく、大坂の代理人もコメントを辞退している。

だが、女子テニス選手でとてもうまくいっているように見えた師弟関係を解消するのは、何も大坂が最初ではない。2018年の「全仏オープン」覇者であるシモナ・ハレプ(ルーマニア)も、「ウィンブルドン」覇者であるアンジェリック・ケルバー(ドイツ)も、それぞれの優勝の後でコーチと決別。ニューヨークタイムズ・スポーツ部門のTwitterは「大坂なおみは四大大会を連覇し、世界1位となった。だから当然、彼女はコーチと決別した」という皮肉な文言になっている。

■「全豪オープン」ニュース:テニス界に衝撃

一方「全豪オープン」ニュースサイトでは、大坂のツイート後に「テニス界に衝撃」という記事を、そして数日後にはその後追い記事を載せている。このサイトによると、大坂は「全豪オープン」を制したわずか2週間後にコーチとの決別を発表し、テニス界を揺るがせた。前年の「全米オープン」と合わせて大坂は四大大会のうち2大会で優勝しており、男女シングルスで日本人として初めて世界ランキング1位となった。わずか1年前には70位以下で、2017年12月にバジンコーチと組んでから、破竹の勢いで世界1位まで駆け上がったのだ。だからこそこの決別は驚きだと元世界女王のリンゼイ・ダベンポート(アメリカ)は語っている。「ビックリです。2人が組んでからの大坂の進歩は素晴らしかった。これだけの結果を出しながら、本当に驚きました。」他にも世界中の解説者やライター、ファンたちが驚きを表明しているようだ。

2018年「全米オープン」準決勝前のインタビューで大坂は「私は自分に対してネガティブになりがちだけど、彼がコーチになってから少しは楽観的になった気がする」「毎日を楽しく、エキサイティングなものにするよう努力してくれる。それが私には合ってる」「私はすごく自分自身と戦うから、彼はいわばそれをなだめてくれるの」といった言葉でバジンを称賛していた。そしてバジンは「僕と組む前から彼女はビッグヒッターで、パワーがあり、テニスのやり方を知っていた。ただそれをどうコントロールするか、いつ決めにいっていつ我慢するか、あるいはただ強く打つことだけが相手にプレッシャーを与える方法ではないことをわかっていなかったかもしれない」と話していた。

■スポーツ・イラストレイテッド:成功の後でコーチと決別することは

そんな中、アメリカのスポーツ誌、スポーツ・イラストレイテッドでは、大坂とコーチの決別に世界中から驚愕の声が上がっているけれど、そこまで驚くことでもない、という意見が述べられている。なぜなら、選手がコーチを最も必要とするのは苦しい時、サポートや精神的な支え、プレーの悪いところを指摘し直してくれる人が必要な時だから。そして成功したら、もうそれらは苦しかった時ほど必要ではなくなる、というのだ。「なぜ今、大坂はバジンと決別するのか。」なぜなら、それがテニス選手のやり方だから。ケルバーやハレプやスローン・スティーブンス(アメリカ)のように。また「全豪オープン」優勝後のインタビューで試合前にコーチとどんな話をしたか聞かれた大坂は「特に何も話してない」と答えており、2人はこの頃から既に以前ほどうまくいっていなかったのでは、という推察も述べられている。

現在WTA(女子テニス協会)はコーチだけの記者会見を開いたり、コーチの年間最優秀賞を新設したりと、以前よりコーチにスポットライトが当たるようにしているが、これは選手にしてみれば自分の強み弱みなどあまり公にしたくないようなことが公になる可能性があるので好ましくはないことかもしれない。またテニス界におけるコーチと選手の関係は、コーチが指導者だが選手が雇い主というとても微妙な関係である。さらに、良いコーチは常に引く手あまただから、バジンコーチが長く職にあぶれるとは考えにくい。だから今回の件で本当に気になるのは大坂だ。大坂は皆に思われていたより自分の意見をはっきり言い、割り切った性格なのかもしれない。彼女はいつまでコーチなしでいくのか、そして次のコーチは誰なのか。もっと大切なことは、大坂は今の成功をこのまま続けていけるのか、ということだ。

日本と同じぐらい世界も大坂とバジンコーチの決別にはショックを受けたようだが、大坂が今後どうなるのか、それは見守っていくしかない。日本のファンと同じように、世界中のファンもバジンコーチを惜しみながらも、大坂が彼を超えて成長していけることを信じて、応援し続けていくと思いたい。

(文/月島ゆみ)

※写真は決別を発表した大坂とバジンコーチ(Photo by Koji Watanabe/Getty Images)