【高校野球】昨秋王者・札幌大谷、厳しい冬を乗り越え初の選抜へ 「うちでしかできないこと」

雪上練習を行う札幌大谷の選手たち【写真:編集部】

真っ白な雪で覆われたグラウンドでダッシュを行うナインたち

 昨秋の明治神宮野球大会を制した札幌大谷が、充実の冬を過ごしている。室内練習場にとどまらず、厳しい寒さの中、雪上練習を敢行。初出場する第91回選抜高校野球大会(3月23日開幕、甲子園)にパワーアップして臨む。

 気温マイナス5度という寒さの中、選手たちが真っ白な雪で覆われたグラウンドに飛び出した。長靴ではなくスニーカーのまま50メートルの距離をダッシュ。前夜降り積もったばかりの数十センチの新雪をかき分けて進むのは容易ではない。中には足を取られて転び、雪まみれになる選手も。とにかく太ももをしっかり上げなければ、前に進まないのだ。

 1本走り終えると、船尾隆広監督から「開拓しろ!」と大きな声が飛んだ。選手たちはすでに踏み固めたラインを避け、深々とした新雪を選んで再び突進。10本走り終えると、全員が肩で息をするほどハードなメニューだった。

 駒大苫小牧が04、05年夏の甲子園を連覇した時の三塁手だった五十嵐大部長がノックバットを握る雪上内野ノックに加え、今年1月からこの雪上ダッシュと雪上でのサーキットトレーニングがスタートした。導入したきっかけについて船尾監督は「ずっと室内で練習していると気が滅入るので」と語る。

 専用の室内練習場にはブルペンがあり、打撃練習も同時に行えるが、本格的な守備練習は難しく、練習メニューは限られる。開放感のある屋外で思い切り体を動かすことは気分転換にもなり、長い冬を乗り越えるための工夫の一つといえる。

昨秋の明治神宮大会では西原、太田の2枚看板で一気に全国の頂点に

 狙いはもう一つ。甲子園のグラウンドに立つ時、この雪上練習を精神的な拠り所にしてほしいという指揮官の思いがある。「本州の高校のように年がら年中外でノックはできないけれど、逆にうちでしかできないことをやって『これだけやったんだ』という自信を持たせることが大事。昔、駒沢(苫小牧)さんも外でノックをして『うちしかやっていない』ということを自信にした」。常識を覆す雪上ノックで甲子園連覇した駒大苫小牧の例を挙げながら、真の狙いを明かした。

 初出場した昨秋の明治神宮大会では、最速142キロの本格派右腕・西原健太(2年)と昨秋公式戦防御率0.95と抜群の安定感を誇る右横手投げの太田流星(2年)を擁して、創部10年目にして一気に全国の頂点まで駆け上がった。投の2枚看板に加え、この冬の体力強化とバットの振り込みで打線も確実に力をつけている。

 14年12月に就任した船尾監督は、函館大有斗時代に2度甲子園に出場し、社会人時代(新日鉄室蘭、NTT北海道)に13度都市対抗出場、97年には日本代表としてインターコンチネンタルカップ優勝に貢献した。世界一を経験した船尾監督と甲子園連覇した五十嵐部長。オール道産子のチームを率いる道産子指導者コンビが、初めての甲子園でどんな戦いをするか楽しみだ。(Full-Count編集部)

© 株式会社Creative2