松坂フィーバー、まさかの“影武者”も… 現在は2球団の高知春季キャンプ

高知で春季キャンプを行う西武【写真:広尾晃】

20年前の1999年は松坂の加入で大いに盛り上がった高知・春野球場

 現在、日本国内のNPB春季キャンプは、宮崎、沖縄、高知で行われている。高知での春季キャンプは、今は西武、阪神の2球団だけとなっている。西武は、2軍が2月1日から高知市春野球場でキャンプを行う。下旬に1軍が宮崎県日南市から移動してくると、2軍は同じ高知市の東部野球場に移動する。阪神は2軍が2月1日から高知県安芸市で春季キャンプを張っている。

 かつては、阪神1軍、オリックス、ダイエー(現ソフトバンク)なども高知で春季キャンプを行っていた。しかし21世紀に入って、高知で春季キャンプを張る球団は減少している。沖縄や宮崎でキャンプを実施する球団が増加しているのだ。

 同じエリアでキャンプを張る球団が減ると、練習試合を行う機会が減る。このために、残る球団も、より多くの球団がキャンプを張るエリアに移転を検討するという流れができてしまう。2016年まで、ロッテ2軍は鹿児島・薩摩川内市でキャンプを行っていたが、2017年から1軍の沖縄県石垣市に合流。鹿児島県での春季キャンプはなくなった。地元自治体は、経済効果が見込めるプロ野球キャンプを引き留めようとしているが、沖縄への一極集中の流れは止められそうにない。

 高知のキャンプが最も盛り上がったのは、今から20年前の1999年。前年、夏の甲子園を沸かせた横浜高校の松坂大輔がドラフト1位で西武ライオンズに入団。高知、春野球場のキャンプで背番号「18」を初お目見えさせた。JR高知駅から春野球場までは、車で20分程度。タクシーはピストン運転でファンを球場に送った。バスも増発された。また駐車場も満車。西武春季キャンプ地は大賑わいになった。

西武の谷中が背番号「18」のユニホームを直用し松坂の影武者に…

 この年2月6日に松坂がブルペンで初めて投げた時は、1000人のファンが取り囲んだ。2月14日、バレンタインデーには1万4000人ものファンが駆け付け、届けられたチョコレートは1200個に上った。宿舎やメイングラウンドに移動するときは、ファンが周囲を取り巻いた。他の選手の移動にも支障が出たので、球団側は背格好が似た谷中真二に「18」のユニフォームを着せて「影武者」を演じさせくらいだ。

 7歳年上の谷中は「悔しい気持ちはある。野球で見返したい」と語っていた。この年は、阪神タイガース監督に野村克也が就任。高知・安芸市のキャンプにも多くのファンが駆け付けた。高知市内の主要なホテルは満室。繁華街も大いににぎわった。

 あれから20年、高知の春季キャンプは、すっかりおとなしくなったが、20日、21日に春野球場で行われた西武1軍と台湾統一の「ライオンズ対決」は、平日にもかかわらず多くのファンが駆け付けた。往時は多くの出店があったが、今は球場内の食堂が1件営業しているだけ。しかし、350円のうどんと高知特産の柚子で味をつけたちらし寿司はよく売れていた。

 22日の高知、東部球場での西武2軍と四国アイランドリーグplusの高知ファイティングドッグスの練習試合は、松井稼頭央2軍監督のデビュー試合となった。高知、駒田徳広監督の呼びかけで実現した試合だが、松井稼頭央もプロデビューは高知の春野球場。思い出の地で松井2軍監督は、指導者としてデビューしたのだ。(広尾晃 / Koh Hiroo)

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