二重被爆者の足跡たどる 継承テーマに「さるく」

 二重被爆者の山口彊(つとむ)さん=2010年に93歳で死去=が長崎市内で被爆する直前の足取りをたどるイベントが23日あり、遺された証言を親族が紹介した。

 市民団体ピースバトン・ナガサキ(調仁美代表)が随時開催している「平和学さるく」で、今年のテーマは「継承」。県内外の15人が参加した。

 三菱重工業長崎造船所に勤務していた山口さんは出張先の広島で被爆後、長崎に戻った。参加者は、山口さんがけがの治療をした三菱病院の分院跡(恵美須町、瓊の浦公園)、家族と再会した実家跡(勝山町)、勤務先で再び被爆した第二事務所跡(飽の浦町)を訪れた。

 孫の原田小鈴さん(44)は当時の風景写真を見せ、「まるであれに追いかけられているみたいだな…」と山口さんの被爆直後のつぶやきを朗読した。山口さんが爆心地方向を眺めた高台で、長女の山崎年子さん(70)は「父が放射線による急性症状に苦しみながら、ここまで上ったのかと驚いた」と感慨深げ。ひ孫の原田晋之介君(12)は「ひいおじいちゃんの気持ちになって(証言を)伝えれば、みんなが平和を考えるきっかけになると思う」と話した。

山口彊さんの証言を朗読する原田小鈴さん(中央)=長崎市水の浦町

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