球団OBが参加することも… 効率良く回れるツアーはキャンプの賢い楽しみ方

沖縄では、今年も多くの球団が春季キャンプを行っている【写真:広尾晃】

アクセスが良くないキャンプ地へチャーターバスで空港から直行

 プロ野球春季キャンプも終盤に差し掛かっている。今季は、特に沖縄地方で天候不順が続いた。

 キャンプは雨天でも中止にはならないが、メニューは変更され、練習は屋内練習場が中心となる。最近は、屋内練習場を公開する球団も増えてきてはいるが、プレスパスやゲストパスを持っていない一般のファンは、十分に見学することができない。

 しかし、旅行会社が企画した球団公認の「春季キャンプ応援ツアー」で訪れた場合、雨でも屋内練習場の見学が保証されていることが多い。そういう特典もあり、最近は各球団の「キャンプツアー」が人気になっている。キャンプツアーは、ほとんどが沖縄を訪問するものだ。

 元々、プロ野球の春季キャンプ地は、観光地とは別の立地で行われることが多く、交通アクセスが良くないこともある。日本ハムの2軍がキャンプを行う国頭村は、那覇市からは車で2時間以上かかる。また宜野座村の阪神キャンプや、金武町の楽天2次キャンプなども、決してアクセスがいい場所とは言えない。

「キャンプ応援ツアー」であれば、那覇空港からチャーターバスですぐにキャンプ地まで行ける。バスの車内では、毎年、個数限定で作成される春季キャンプオリジナルのベースボールキャップと、ツアー専用の特別なパスが配布される。最近は、チームのOBや球団応援番組のパーソナリティなどが同乗することも多く、キャンプ地へ向かう車内から「応援ムード」は高まる。

 キャンプ地に到着すると、ツアーコンダクターが先導しながら各施設を見て回る。初めて訪れる一般のファンは、選手がどこでどんな練習をしているのか戸惑うことも多いが、ツアーならメイングラウンドはもちろんのこと、サブグラウンドやブルペンなど練習場所を効率よく見て回ることができる。

練習試合などはバックネット裏の特別席で観戦も

 また、サブグラウンドや多目的広場などで、選手との記念撮影やサイン会が行われることもある。一般のファンの場合、選手との接触は時間が限られ、サイン会も長い行列ができることがあるが、ツアーではしっかり時間と場所が確保されている。ツアーによっては、事前に選手がサインをした色紙が配られる場合もあるが、やはり「その場でサインをしてほしい」という要望が多いようだ。

 選手との記念撮影やサイン会の際には、チームのOBが現役選手を紹介することも多い。「この選手に注目してください。来年にはオールスター戦に出ると思いますから」と若手選手を紹介するなど、ファンの期待感を盛り上げている。

 午後は練習試合などを観戦するメニューが多い。その際もバックネット裏の特別席が用意される。ただ、試合が長引いた場合は、スケジュール通りに動かなければならないため、観戦を切り上げることもある。ツアー客の中には試合を最後まで見られず、「ちょっと残念」と思う人もいるようだ。

 ホテルに戻ると、ディナーショーが開催されるツアーも多い。球団OBが今年のチームの特色を紹介したり、球団歌を全員で合唱したり、参加するファンの一体感が高まる時間だ。翌朝は、観光地を巡るフリープランになっている場合が多く、ツアー客は買い物を楽しんだ後に帰路に就く。

 話を聞いたツアー客の中には「友人に誘われてツアーに参加したが、キャンプ地を回ってディナーショーを楽しんでいるうちに球団のファンになってしまった」という人もいた。

 プロ野球の春季キャンプは日程が決まるのが遅く、特に休養日は天候によって直前に変更されることもある。このために旅程を組むのが難しく、ツアーの本数自体は多くない。

 本拠地からのツアーが大部分だが「確実に選手とふれあえる」という点では、ツアーへの参加は「賢い楽しみ方」だと言えるだろう。(広尾晃 / Koh Hiroo)

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