「お経」で窃盗犯 撃退 納骨堂被害減へ センサー開発 長崎の警備会社 行動パターン識別、音声流す

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 不特定多数の人が訪れる寺院や神社は、さい銭盗や放火、落書きなど犯罪のリスクにさらされている。長崎県内でも過去に、国指定重要文化財の仏像や経典などの盗難事件が発生している。寺社が防犯体制の整備に苦慮する中、長崎市のセキュリティー会社は「お経」で窃盗犯を撃退するセンサーを開発した。

 ■開放性

 「門を閉め切るわけにもいかない。寺や神社で完ぺきなセキュリティーは困難な話です」。長崎市内の寺の管理者はため息交じりにこう明かす。

 防犯対策として20年前にセンサーを導入したが、墓所の石像盗難などが頻発した。被害を防げなかった背景には寺の「開放性」がある。窃盗犯の中には土産袋を手にするなど観光客を装う者もいて、参拝客か不審者かの見分けが難しい。今では監視カメラや赤外線センサーも追加で設置したが、管理者は「不安は尽きない」と話す。

 佐世保市内の寺は近年、さい銭盗が収まった半面、落書き被害に頭を悩ます。住職は「監視カメラを設置していない寺も多い。今の時代、セキュリティーは絶対に必要」と強調する。

 ■位牌も

 監視カメラを遠隔操作できる警備システムの設置などを手掛けるセキュリティハウスケント(長崎県長崎市三景台町)の尾花敏徳社長(71)は、寺の納骨堂で読経の音声を流して窃盗犯を撃退する防犯技術を開発した。3月にも特許を取得する見込み。

 約10年前。営業で長崎県内の寺院を回ると、関係者から「納骨堂で窃盗が増えている」と聞いた。狙われるのは祭壇に供えた小銭や家族の思い出の品。位牌(いはい)まで盗まれることもあるという。

 墓を建てるより安価で遺族負担も軽いとされることから、近年は納骨堂で永代供養するケースが増えている。こうした事情を踏まえ、納骨堂の防犯が必要だと開発を決意した。

 この防犯センサーは、参拝客と窃盗犯の行動パターンを10通りずつ記憶。窃盗犯特有の動きをしたり、一定時間以上、堂内にとどまる人がいたりした場合にシステムが識別し、お経を流す。お経は宗派別に5パターンを用意。夜間は警報ブザーに切り替わり、管理者に通報する仕組みだ。

 ■多様性

 尾花社長は「昼間の参拝客にストレスを感じさせないことが特徴。泥棒にも罪を犯す1歩手前で、お経を聞いて改心してほしい」と説明する。特許取得後、メーカーと提携し商品化を目指す。

 長崎県警によると、寺社境内での窃盗などは統計がなく、「警察に届け出ないケースも多く全体把握は難しい」という。昨年認知したさい銭盗は14件(前年比27件減)、被害額は約5万6千円(同約6万4千円減)。経典など文化財の盗難は単に被害額では測れない。

 人々の信仰のよりどころをどう守るのか。長崎市内の寺の住職は「これから寺社を訪れる人もどんどん多様化する。防犯設備を含め、寺社の在り方も変えないといけない」と話した。

「自動お経装置」(仮称)を開発した尾花社長=長崎県長崎市、セキュリティハウスケント
夜間は監視カメラと赤外線センサーで不審者の出入りを警戒している=長崎県長崎市寺町、長照寺