韓国の保守野党を沈没させる「歴史歪曲」のトンデモ言説

今月17日、韓国の国会である記者会見が開かれた。壇上に姿を見せたのは野党・正しい未来党の議員で北朝鮮人権運動を行ってきた河泰慶(ハ・テギョン)氏と、脱北者団体の代表ら。そこに光州民主化運動関連の団体関係者も加わった。一見、つながりのないようなこの顔ぶれだが、場を共にしたのにはそれなりのワケがある。

日本では「光州事件」の呼び名で知られている1980年5月の光州民主化運動。民主化を求める韓国国民の声を押さえつけ、政権を掌握しようとした後の大統領、全斗煥氏ら「新軍部」がデモを武力で弾圧し、韓国政府が認定しただけでも死者165人、行方不明者76人、負傷者3515人を出す惨事となった。

全氏の下野直後から今に至るまで、真相究明のための調査が続けられており、民主化を求めた運きであったことは明らかだ。その事実は法によって認められている。

1980年5月、光州一帯で起こったデモに対して、軍部などによる憲政秩序破壊犯罪と、不当な公権力行使で多数の犠牲者と被害者が発生した事件

5·18民主化運動真相究明のための特別法第2条第1項

高明昇:北朝鮮特殊軍600人という話についてコメントを出したことはありません。

全斗煥:何だって?600人とは何かね?

鄭鎬溶:北から600人が来たということです。池萬元氏が主張しています。

全斗煥:どこから来たのか?

鄭鎬溶:5.18のときに光州に。それで北朝鮮軍と光州の人たちが共に蜂起したから鎮圧したということだ。

全斗煥:ほう、そうなのか…今日初めて聞いた。

冒頭で言及した記者会見で、韓国のNGO・北韓戦略センターの姜哲煥(カン・チョラン)代表は「池氏は私が幼いころに光州に派遣され、スパイ活動を行ったと主張しているが、私は1977年から1989年までの12年間、咸鏡南道(ハムギョンナムド)の政治犯収容所に収容されていた」とし、「最初は頭のおかしい人だと思い気にしなかったが、自由韓国党が518真相調査委員に(池氏を)推薦しようとしている有様は見るに堪えない」と述べた。

ちなみに、姜氏は当時12歳である。池氏に北朝鮮軍呼ばわりされた脱北者の中で最年少の人物は、なんと当時3歳だったとのことだ。

また、北朝鮮へのビラ散布を行ってきた北韓同胞直接援助運動のイ・ミンボク風船団長は「北朝鮮は私のことを嫌っているのに、なぜ私がスパイと言えるのか」と呆れた様子で語った。

さらに、元朝鮮人民軍中尉で1993年に韓国に亡命、池萬元被害者対策委員会の共同代表を勤めるイム・ヨンソン氏は18日、公共放送KBSラジオの時事番組「最強時事」に出演。自らも池氏からスパイ呼ばわりされていると明らかにした上で、(1980年には)16歳の高等中学校の生徒で、人民軍に入隊もしていないのにどうやって光州に派遣されたというのか、と怒りをあらわにした。

「北朝鮮から光州に派遣された」と「証言」した脱北者についてイム氏は、池氏にカネで雇われたと主張している。イム氏はこの人物を告訴しているが、光州の人々のもとに行ってすべてを告白してほしいとして、場合によっては告訴を取り下げる意思を示した。

韓国では、貧しい暮らしを強いられている脱北者が、極右団体からカネを受け取って政治集会などに参加する事例が後を絶たない。

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