海ドラは“家族”に注目!? 町山智浩が語る「ブラックライトニング」「メディア王~華麗なる一族~」の魅力

海ドラは“家族”に注目!? 町山智浩が語る「ブラックライトニング」「メディア王~華麗なる一族~」の魅力

ワーナー・ブラザースホーム エンターテイメントは、海外ドラマ「ブラックライトニング〈シーズン1〉」と「メディア王~華麗なる一族~〈シーズン1〉」の試写イベントを2月20日に東京・港区で開催。映画評論家の町山智浩氏が両作品の解説で登壇した。

初めに上映された「ブラックライトニング」(18年~)は、黒人ヒーローを描いたDCコミックが原作ながら、主人公がヒーローを引退した40代の校長という異色作。かつてスーパーヒーローとして街の治安を守っていたが、結婚して家庭を持ったことを機にヒーローを辞めたジェフが、家族や身近な人々をギャングから守るために再びヒーローとなるというストーリーだ。全米では地上波のThe CWで午後9時から放送されているが、これを町山氏は「日本に例えれば夜、『仮面ライダー』が放送されているようなもの」と表現。「子どもの頃にコミックを読んで育った人が大人になって、夜、仕事から帰ってきてこのドラマを見ている。だから、結婚して良き父親になったけど、自分はこれでいいのかとアイデンティティーについて考えるとか、お父さん世代が共感できる物語になっている。お父さんが楽しめる、お父さんのためのスーパーヒーローなんです」と、これまでのヒーローものにはなかった特徴を指摘した。

第1話の冒頭に運転中のジェフが警察官に車を止められるシーンがあるが、「このシーンはアメリカで問題になっている警察官による不当な職務質問を描いています。ジェフの(政治意識が強い)長女が『ハリエット』というあだ名で呼ばれますが、これは南北戦争時代の女性活動家、ハリエット・タブマンから来ている。このように本作はアメリカの社会問題や黒人文化を色濃く反映させている」と解説。「暴力描写に関する規制が緩やかになる夜9時台の放送なので、ハードな暴力や殺人シーンもあります。でも、一方で、FワードやNワードと言われる下品な言葉や差別的な言葉は、厳しく規制されている。だから、本作の悪役・トビアスは丁寧な言葉を使うインテリという設定になっている。この悪役が非常に魅力的なんですよ」と、アメリカの地上波のユニークな点と、それを逆手に取った本作の戦略についても分析した。

続いて上映された「メディア王~華麗なる一族~」(18年~)は、巨大メディア企業を経営する富豪一族の物語。テレビ局や新聞社、出版社を所有するルパート・マードック氏をモデルにしたといわれるローガン・ロイが主人公。80歳になっても会社のトップの座を譲らないローガンの後継者になるべく、4人の子どもたちが争いを繰り広げる。町山氏は「このドラマは権力争いのドラマであると同時にファミリードラマでもあります。シェークスピアの『リア王』をベースにしていますが、『リア王』には心の優しい末娘が出てきたのに対して、本作は全員イヤな奴ばかり」と解説。本作はスポンサーに縛られない有料ケーブルチャンネルのHBOで放送されているだけあって汚い言葉も使い放題。「ちょっとコンビニに行くのにヘリコプターを使うような、貴族よりもぜいたくな生活をしている人たちなのに、全員、教養がなくて下品で人間的にもサイテー(笑)。ブラックコメディーとして作られていて、そういう意味では、1999年からHBOで放送されて大成功した『ザ・ソプラノズ/哀愁のマフィア』(99~07年)に似ていますね。『ザ・ソプラノズ』はマフィアのボスの家族を描いたドラマですが、これもブラックコメディーで、毎回、爆笑するわけじゃないけど、苦笑いしてしまうような作品でした」と過去作との類似点も指摘した。

最後に町山氏は「『ブラックライトニング』と『メディア王』は真逆のファミリードラマ。片方は自分のご近所の平和のために(校長としては非暴力主義を唱えながら)ギャングをブチのめしているお父さん、もう片方は全世界を支配するくらいの大金持ちの一家なのに家族の間でモメている。どちらの家族もハタから見ていると面白い(笑)」と両作の魅力を語ってトークを締めくくった。

【作品情報】


「ブラックライトニング〈シーズン1〉」

DVDコンプリート・ボックス 発売中 9,400円+税
DVD Vol.1~7 レンタル中
デジタル配信中
発売・販売/ワーナー・ブラザースホーム エンターテイメント

「メディア王~華麗なる一族」

DVD Vol.1~5 3月6日(水)レンタル開始
発売・販売/ワーナー・ブラザースホーム エンターテイメント

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