インディカー王者獲得には常設ロードでの速さが不可欠。10年目を迎える琢磨は三強を崩せるか?

 NTTを新タイトルスポンサーに迎えたインディカー・シリーズは、2月半ばに2日間の合同テストをテキサス州オースティンのサーキット・オブ・ジ・アメリカス(COTA)で開催した。

 今年からカレンダーに加わるF1グランプリ開催ロードコースだ。全長が3.41マイルとアメリカでは長い部類に入るコース。そこで最速ラップを記録したのがルーキーのコルトン・ハータ(ハーディング・スタインブレナー・レーシング)だ。

 2番時計はアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)、3番手はウィル・パワー(チーム・ペンスキー)で、4、5番手にはライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)とシモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)が続いた。

 昨年、自身5回目のシリーズタイトルを獲得したスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)は、新チームメイトとなるルーキーのフェリックス・ローゼンクヴィストとグラハム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)の後ろとなる8番手だった。

コルトン・ハータ(ハーディング・スタインブレナー・レーシング)

 4セッションすべてで最速になる可能性すらあったハータは、「このコースは僕のドライビングスタイルに本当にピッタリ合っているんだ」と話していた。しかし、あの速さが本物なのかは3月のレース本番まで判断を待ちたい。テストでのマシンはどのチームのものも完全なレース適合であるかがわからないからだ。

 ハータを除くと、トップはロッシで、ハンター-レイが3番手。アンドレッティ・オートスポートはトップ5にふたりが名を連ねた。昨年のミド・オハイオとソノマでポール・トゥ・ウインを飾っているアンドレッティ軍団は、今年も常設ロードコースで速さを見せるのは間違いなさそうだ。

アレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)

 チーム・ペンスキーもCOTAではふたりがトップ5に入った。昨年はバーバー、インディのロードコース、ロードアメリカでポール・トゥ・ウインを記録し、ポートランドでもポールポジションを獲得と、アンドレッティ勢以上の成績を残したのが彼らだった。

「自分たちが弱かったのはどこなのかを理解できていたので、オフの間に改善することに全力を注いだ。そして、その成果をすでに感じることができている」と話したのは、ローダウンフォースのマシンに手こずっていたパジェノー。今シーズンのペンスキーは、ジョセフ・ニューガーデンを合わせた3人全員が優勝コンテンダーとなる可能性が高まった。

フェリックス・ローゼンクヴィスト(チップ・ガナッシ)

 チップ・ガナッシ・レーシングは、エド・ジョーンズを1年で放出してルーキーのローゼンクヴィストを起用。

「デビューシーズンの目標は、できるだけ早く1勝を挙げること」と言い切るスウェーデン出身の27歳は、いきなりディフェンディングチャンピオンより速いラップを記録した。ディクソンとのコンビネーションも良さそうで、いつもスロースターター気味のガナッシだが、2019年はシーズン序盤から高い戦闘力を発揮することになるかもしれない。

■合同テストは苦戦した佐藤琢磨

 佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)はインディカー参戦10シーズン目を迎える。チームは引き続きレイホール・レターマン・ラニガン・レーシング。

 昨年ポートランドで見事な優勝を記録した彼は、テストではなかなかラップタイムを縮められずに苦労をしていたが、先にチームメイトのレイホール二世=グラハムがマシンを向上させ、琢磨は2日目の最後ギリギリで好タイムをマーク。マシンの感触も良くすることができたようだった。

 ガナッシ、ペンスキー、アンドレッティの三強に肩を並べるべく、彼らはエンジニアリング部門をさらに強化。ふたりのドライバーが揃ってチャンピオンの座を争い、どちらかがそれを制することを目指している。

 今回のテストでの彼らは、三強の一角を崩せるか否か……といったパフォーマンスを発揮するにとどまった。タイトル獲得には、今シーズン中にあと一段の進歩を遂げることが必要だろう。

佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン)

 COTAでのテストにおける各チームのパフォーマンスは、常設ロードコースにおける現在の実力を表していた。今年も三強と呼ばれるチームは皆強いということだ。

 インディカー・シリーズはコースバラエティが豊富で、常設ロードコースの他にもストリートコース、ショートオーバル、インターミディエイトオーバル、スーパースピードウェイがあり、チャンピオンの栄冠を掴むことができるのは、どんなコースでも速いオールマイティなドライバーだ。

 しかし、今年はフェニックスの1マイルオーバルがカレンダーから外れて代わりにCOTAが入り、最終戦はソノマからラグナセカに変わった。

 インディ500と最終戦がダブルポイントなので、それらを2レースと考えてコースバラエティのスケジュールに占める割合を見ると、常設ロードコースのレース数は昨シーズンより1戦増えてる19戦中の8戦(次がストリートの5戦で、オーバルはスーパースピードウェイが3戦、ショートが2戦、1.5マイルが1戦)。

 常設ロードコースで速いことがチャンピオン争いで最も大きなアドバンテージになる。シーズン第2戦がCOTAで、第3戦がバーバー・モータースポーツパーク。インディアナポリスのロードコースが第5戦と、シーズン序盤の6レースのうちの半分=3レースが常設ロードコース。

 スタートダッシュを決めるにはこの手のコースでの速さが必須だ。しかも、チャンピオン争いが佳境のシーズン最終2戦はポートランド、ラグナセカのロードコース連戦で、しかも最終戦はダブルポイント。やはり常設ロードコースでの速さが最も大きな武器になる。今回のテストで上位につけた面々にはチャンピオンの目が十分にあるということだ。

© 株式会社三栄