『グリーンブック』 130分間、一瞬たりとも飽きさせない

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 『メリーに首ったけ』『愛しのローズマリー』など“おバカ”コメディーで知られるファレリー兄弟の兄ピーターの監督作。それが何と本年度の賞レースを席巻し、「アカデミー賞に最も近い賞」と言われるトロント国際映画祭の観客賞を皮切りに、ゴールデン・グローブ賞(コメディー/ミュージカル部門)、ついにはアカデミー賞の作品賞(ほか2冠)までゲットしてしまった!

 舞台は1962年。口は達者だが粗野な白人用心棒が、黒人の天才ピアニストから運転手に雇われ、人種差別が色濃い南部を演奏ツアーで巡る。生まれ育った環境も肌の色も、何もかも正反対の二人が育む友情ものといえば、日本でも大ヒットしたフランス映画『最強のふたり』が思い出されるが、同様に実話ベース。加えて、より人種問題や二人のギャップが強調されるため友情の進捗状況が分かりやすく、笑いと感動の振れ幅も大きい。その上、今や映画界のトレンドともいえる“音楽映画”の魅力まであって、ハリウッド的なエンターテインメントの粋を集めた作品に仕上がっている。

 だが、それがかえってアカデミー賞ではネックという声を生んだことも事実。とはいえ、人種差別だけでなく、笑いを交えて常にマイノリティーに寄り添うファレリーのスタンスは大いに好感が持てる。何より130分間、一瞬たりとも飽きさせないし、ケンタッキー・フライドチキンだって食べたくなる。★★★★★(外山真也)

監督:ピーター・ファレリー

出演:ヴィゴ・モーテンセン、マハーシャラ・アリ

3月1日(金)から全国公開

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