「民意」を受けても

 「沖縄に米軍基地が集中している現状は到底容認できない」「基地負担軽減に向けて全力で取り組む」。米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を巡る沖縄県民投票の結果を受けて、安倍晋三首相はこう発言した▲それなら言葉通りに実行してくれ-というのが、多くの人々の気持ちではあるまいか。投票率は50%を超え、その7割超が辺野古沿岸埋め立てに対する「反対」だった▲住宅密集地のすぐそばを軍用ヘリコプターが発着し、「世界で最も危険な基地」とも呼ばれる普天間飛行場。その負担をなくすために、同じ県内の辺野古で基地の重荷を引き受けることはできないと、県民がはっきり意思表示したことになる▲これに対し首相は「普天間が固定化され、危険なまま置き去りにされることは絶対に避けなければならない」と強調したが、その唯一の解決策が辺野古移転であるとの立場は崩さなかった▲投票で問われたのは普天間移設の是非ではなかったのに、かみ合わない。投票の結果を尊重するつもりは最初からなかったのだろう▲テレビ画面に映し出される辺野古の海では、県民投票などなかったかのごとく、土砂投入が着々と進んでいる。例え沖縄の人々に心を寄せているかのような発言をしようと、この現実を見る限り、首相の意思もまたはっきりしている。(泉)

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