ブレークダンス、五輪へ新風 自由な若者文化、賛否の声

2024年パリ五輪の追加種目候補にブレークダンスが選ばれ、喜ぶ河合来夢選手(左)と半井重幸選手=22日、東京都江東区

 ヒップホップの軽快な音楽に乗って対決形式で踊りを披露するブレークダンスが、2024年パリ五輪の追加種目にサプライズで候補入りした。もともと米国のギャング抗争に起源があるとされ、1970年代にニューヨークのストリートでダンス対決に特化して世界に広がった若者文化。80年代にいち早く「輸入」して世界の強豪国に成長した日本でも期待は高まるばかりだが、自由な空気で発展してきただけに、伝統と格式を重んじる五輪のスポーツ枠に当てはめられることへ賛否の声も広がっている。(共同通信=田村崇仁)

 ▽愛好者100万人

 米国発祥ながらフランスでも人気は高く、愛好者は推定100万人、加盟クラブは350に上る。「ブレイキン」とも呼ばれ、日本ダンススポーツ連盟によると、ストリートダンス愛好者は国内でも100万人を超える。国際オリンピック委員会(IOC)は「男女のバランス、若者重視、都会性に配慮した五輪改革の目標に沿っている」と歓迎の声明を出した。

夏季ユース五輪で新採用されたダンススポーツのブレークダンス男子で銅メダルを獲得した半井重幸選手=ブエノスアイレス(OIS提供・共同)

 原則15~18歳を対象とした昨年10月の夏季ユース五輪(ブエノスアイレス)で初めて実施され、デビュー戦として上々の評価だった。高層ビルを背景に大音量の音楽が流れ、市内中心部の公園に設けられた会場はダンス対決を見ようと立ち見も含めて連日の大盛況。陽気なMC(司会)が進行を務め、選手をダンサーネームの愛称で呼ぶなど「五輪」の名を冠した大会に新風を吹かせた。視察した東京五輪・パラリンピック組織委員会の室伏広治スポーツディレクターも「若者の人気と熱狂ぶりがすごい」と感心したほどだ。

 日本勢は女子の河合来夢選手(神奈川・百合丘高)が金メダルで初代女王に輝き、男子の半井重幸選手(大阪学芸高)も銅メダルを獲得。10代の祭典で男女とも表彰台に上がり、強豪国の実力を印象付けた。ダンスは中学の体育でも必修化され、最近は子ども向けダンス教室が盛況という。

夏季ユース五輪で初採用されたダンススポーツのブレークダンス混合団体で金メダルを獲得した河合来夢選手(右)=ブエノスアイレス(共同)

 ▽時代は都市型

 一方で懐疑的な見方もある。日本連盟によると、パリ五輪組織委員会の発表前にはダンサーの間で「五輪反対派」がSNSなどで運動を展開。競技中などの挑発的なポーズや言動が五輪精神に反するとの意見もある。

 五輪入りへ審査基準の明確化も課題だ。従来は「どっちがかっこいいか」などジャッジの主観に頼っていたが、ユース五輪は技の難易度をチェックする「身体」、音楽と調和した姿勢を見る「解釈」、独創性や個性を比較する「芸術」の3点を柱とした新基準を試験的に導入した。「スポーツ化」へ試行錯誤は続く。

 最近はバスケットボール3人制やスケートボード、自転車BMXフリースタイル・パークなど若者に人気なストリート発祥の「都市型スポーツ」が五輪種目に採用される潮流がある。東京五輪でも新顔として注目を集めそうなのが、こうした音楽やファッションと融合して手軽に街中で楽しめるスタイルの「都市型スポーツ」だ。低コストで開催でき、五輪のブランド力低下を懸念するIOCの狙いとも合致する。

 映画や人気テレビ番組「ダンス甲子園」も追い風となり、日本でも普及したブレークダンス。パリ五輪の組織委は「世界各国の若者にスポーツ参加を促す機会になる。対決形式は観客にも魅力的で、独自の文化が五輪に新たな風を吹かせてくれる」と期待している。

夏季ユース五輪に初採用されたダンススポーツのブレークダンス混合団体で金メダルを獲得した河合来夢選手(左から4人目)らメダリスト=ブエノスアイレス(OIS提供・共同)

 2024年パリ五輪の追加種目候補 国際オリンピック委員会(IOC)は開催都市が複数の追加種目を提案できる権利を20年東京大会から認めた。パリ五輪の大会組織委員会は若者人気を重視し、スケートボード、スポーツクライミング、サーフィン、ブレークダンスの4競技12種目を候補に選出。IOCが3月のプログラム委員会と理事会を経て、6月の総会で承認を諮る予定。さらに東京五輪での実施状況を検証し、20年12月の理事会で各種目の選手数を含めて最終決定する。

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