日本の食文化を支える ニューヨークになかった市場を創出 OKONOMI・YUJI Ramen・OSAKANA・Okozushi オーナー/ GUCHI’S IDEA LLC  原口雄次社長

ニューヨークで日本らしい魚の食文化を広めたい。ブルックリンを中心に、これまでにないジャンルのラーメンや定食のお店を手掛けるGUCHI’S IDEA LLCの原口雄次社長(38)。「もったいない」「地産地消」といった理念を掲げ、「従業員が共感してやりがいを得られるのが一番」として社会や顧客にも役立つ仕事を追い求める。

原口雄次(はらぐち・ゆうじ)■宇都宮市出身。オレゴン州の大学に編入・卒業後、日本のメーカーに就職。2007年に食品商社「True World Foods」に転職、13年に「YUJI Ramen」開業、独立。14年にレストラン「OKONOMI」、16年に鮮魚店「OSAKANA」を開業。19年2月にはマンハッタンにある日系スーパー「片桐」グランドセントラル店内にOSAKANA2号店を出店。東京と京都にも店舗を持つ

20歳の頃に米国の大学に編入、卒業後一度日本で就職した。その社会人時代に趣味の調理の腕を独学で鍛えるとともに、英語を生かせる仕事を求め、魚を中心に扱う食品商社「トゥルー・ワールド・フーズ」に移った。「自分の店を持ちたい」との夢を胸に秘め、全米各地のレストランなどを営業で回って食に関する知識と人脈を深めつつ、見よう見まねでシェフの技を家で試した。

常に心掛けていたのは「相手が欲しているものを考え抜く」こと。いかに取引先にもうけてもらうか、お店側の気持ちになって頭を悩ませ、「魚と一緒にちまたのトレンドなどお得情報を届けるようにした」。その過程で米国人の市場に受け入れられる料理が何か、つかめてきた。

営業をこなして5年ほどたったある日、転機が訪れた。ポップアップのラーメン店をブルックリンに出店。得意料理のパスタに似せた感覚でウニやベーコンを入れて工夫を凝らし、スープなし、混ぜ麺専門店として豚骨ならぬ、「ツナコツラーメン」を売り出した。2010年代前半の当時、ラーメンブームも相まってメディアに注目され、人気に火が付いた。その後商社は退職、常設店の「YUJI Ramen」を開き、経営の道を歩み出した。

高い目標を設けては次々と達成していった。他の人がまだやっていない分野を狙い、「業界に変化を与えたい」と意気込んでいた。仕入れた鮮魚を余すことなく使おうと考え、一汁一菜がテーマのお店「OKONOMI」では朝に焼き魚定食を提供。残ったあらは夕方に開くラーメン店のスープとして使う。「余さず使い切る」精神で、お店はまたもニューヨーカーに受けた。

経営が軌道に乗り、快進撃を続ける原口さんは、休日をしっかり取るのがポリシー。家族と過ごす時間を大事にし、子育てに夢中のイクメンだ。一方、趣味の野球観戦にも余念がない。ユニオンスクエアのファーマーズマーケットが好きでよく訪れるといい、「あのクオリティーの野菜や食品が手軽に手に入るのはすごい」と感服する。

自分の店を持つという初期の夢がかない、「今は従業員の夢の実現を後押ししたい」と原口さん。16年に開いた鮮魚店「OSAKANA」は他区からも買い求める客が後を絶たない。正月や子供のお食い初めの需要にも応え、「日本の文化を支えられているかな」と照れ笑い。「ひとまず40歳まで突っ走ります」。勢いは止まらない。

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