<ブレーク盤> 須田景凪『teeter』 多彩な曲調、華のある歌声

須田景凪『teeter』

 “バルーン”名義で動画サイトに投稿した『シャルル』というボーカロイド曲がカラオケで大人気となった男性シンガーソングライターの6曲入り作品。mock、パレイドリア、farce、Dolly、レソロジカ、浮花(ふか)とその曲名を並べただけでも一筋縄ではいかぬ感じが漂っている。

 まず一通り聴くと、ボカロ曲に多い高速ギターロックの『mock』、90年代J-POP風のキャッチーな『farce』、そして歌い上げるバラードの『浮花』など予想以上に多彩な曲調が多いことに気づく。歌声も、Mr.Childrenやポルノグラフィティなど大物になりそうな華がある。

 さらに歌詞カードを読みこんで聴くと、空虚な日々の中でも前を向きたいと願う『Dolly』や恋になる前に別れを恐れる『レソロジカ』など、割り切れない感情を繊細に描き、歌だからこそよりリアルに伝わる。だからこそ多感な世代に人気で、これだけ深遠だとパッケージを楽しみながら聴きたいファンが多いのも納得だ。

 DVDには『mock』と『Dolly』のアニメーションビデオを収録。本作を堪能すれば、人の気持ちをより丁寧にくみ取りたいという想いが強くなるはず。

(ワーナー・CD+DVD初回限定盤 2500円+税)=臼井孝

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