高2自殺いじめ認定 学校は第三者委の報告書受け入れず 学校側から「突然死」「転校」提案 憤る遺族

長崎

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 長崎県長崎市の私立高2年の男子生徒=当時(16)=が2017年4月に自殺した問題で、学校側が原因究明のために設置した第三者委員会が「自殺は同級生のいじめが主たる要因」との報告書をまとめていたことが26日、分かった。ただ、学校側はいじめの認定を不服として報告書を受け入れない考えを男子生徒の遺族に伝えたという。

 男子生徒の父親(51)と母親(46)、兄(20)が記者会見で明らかにした。遺族らによると、生徒は2017年4月21日朝、長崎市本河内1丁目の公園で自殺しているのが見つかった。

 自殺後、遺族は、遺書とは別に、男子生徒がいじめに苦しんでいる心情をつづったノートを発見。そこには、同級生から空腹時のおなかの音について「さんざんdisってきた(侮辱された)」「ゆるさない」などと記されていた。

 遺族は同年5月、第三者委による自殺の原因調査を要請。学校側は、いじめ防止対策推進法が定める「重大事態」に当たる可能性があるとして、弁護士らでつくる第三者委を設置し7月から調査を始めた。

 第三者委が昨年11月に作成した報告書は、男子生徒が中学3年以降、同級生からおなかの音をからかわれたり、別室にいると無理やり扉を開けられたりするいじめを受けていたと認定。いじめを主要因としつつ、心理的な孤独や教師からの理不尽な指導などが相互に作用して自死につながった-と結論付けた。

 しかし、学校側は今年1月、両親に対し「具体的事実関係の裏付けが示されていない」として報告書を受け入れない意向を伝達。遺族は学校がいじめと自殺の因果関係を認めた上で、問題を総括する文書の提出を求めているが、学校側の対応次第では法的措置も検討するという。

 一般的にいじめが原因と疑われる自殺で第三者委の調査結果に遺族が反発する事例は少なくないが、学校が受け入れを拒むケースは異例。長崎県は「第三者委設置は本来、遺族に寄り添って考えるという趣旨。今回のようなケースは想定されていない」と困惑する。

 学校の担当者は取材に対し「学園と遺族双方の代理人弁護士同士が話し合いをしている最中で、コメントは差し控えたい」とした。

 ■学校側から「突然死」「転校」提案 憤る遺族

 26日に長崎県庁で会見した男子生徒=当時(16)=の遺族は学校側の対応を「不誠実」だと強く批判した。男子生徒の死後、学校側から自殺ではなく「突然死」「転校」とすることを提案されたと明かし、「こんなに遺族の気持ちをばかにして、教育者がやるべきことか」と憤った。

 遺族は再三、学校での事故の被害者に災害共済給付金を支払う独立行政法人「日本スポーツ振興センター」(東京)への申請を学校側に要請したが、学校側はこれを拒否。申請の「時効」が4月に迫る中、学校側は弁護士を通じて「学校への損害賠償請求権の放棄」を条件にした保険の申請を提案してきたという。

 父親は「提案は断った。お金の問題じゃない。私学なら命に関することでも何でもできるんだと思った」と怒気を込めて述べた。

 生徒は自殺前、ノートに同級生によるいじめや教諭による理不尽な指導内容などを書きつづっていた。母親は「何も知らなかった。親として早く気付いてあげればよかった」、父親は「守れなかったことを悔やんでも悔やみきれない。無力な父親だと思う」と自らを責めた。

 2013年に長崎市の女子児童が自殺した問題で調査委員を務めた教育評論家、武田さち子さんは、いじめ防止対策推進法でいじめが「本人が心身の苦痛を感じているもの」と定義されていることを踏まえ、今回の被害生徒が受けた行為は「明らかな嫌がらせで、いじめ」と指摘。「学校は報告書をしっかり読み込み、反省すべき点は反省し、再発防止につなげなければならない」と話す。

 いじめ防止に取り組む「NPO法人ジェントルハートプロジェクト」(神奈川県)の小森美登里理事は、「学校側が納得できる内容でなければ報告書を出さないという事態になれば、中立であるべき第三者委がバランスを欠き、機能していないという証明になる。学校は第三者委を自分の持ち物のように思っているのではないか」と疑問を呈した。

生徒が亡くなる前にいじめなどについて書き残したノートのコピーを手に説明する遺族=長崎県庁