音の鳴る飴で脳が旅をする!? レクサスによる体験型イベントがスゴかった

レクサス “Journey on the Tongue”

レクサスによる体感型イベント『Journey on the Tongue』とは

工芸品や料理といった様々な分野のクリエイターとコラボしているレクサスが、また新たなコラボレーションイベントを開始する。それが今回潜入してきた体験型展示会『Journey on the Tongue』。

名前を直訳すると『舌の上での旅』ということなので、世界各国の料理が食べられる? などと安直な予想をして会場に駆けつけると、そこでは予想を遥かに超える未知の体験が待っていた。

今回は2019年2月26日夜に行われた先行体験会の様子をレポート。このイベントは3月15日まで、東京は南青山にあるレクサスのブランド発信拠点「INTERSECT BY LEXUS」で開催される。もちろん会期中は一般の方も参加可能だ。

旅先で出会った12種類の自然の香りから始まる体験

レクサス “Journey on the Tongue” 世界各地の自然の創造物。それぞれが独特の香りを放ち、その香りがインスピレーションを刺激する
レクサス “Journey on the Tongue” 世界各地の自然の創造物。それぞれが独特の香りを放ち、その香りがインスピレーションを刺激する

まず、12種類の自然の創造物が参加者の前に提示される。参加者はその香りを嗅ぎ、直感的に好きなものを一つ選ぶ。

しかし、置かれていたのは鉱物や土、乾燥した植物に鳥の羽など、いずれも一見「そもそも香りなど無いのでは」と感じさせる品々。

ところがこのガラスケースを外してみると、不思議なことにどの自然物も異なった香りを放っている。例えば写真左の水滴のような物体からは雨の日の空気のような香りが、写真右の赤い鉱物からは、不思議と酢のような酸っぱい香りが感じられた。

これが世界各国の異なる情景を示しており、参加者は選んだ香りに紐付いた“体験”に進むことができる。

香りに誘われて、いよいよ旅の体験がスタート

レクサス “Journey on the Tongue”
レクサス “Journey on the Tongue” 頭上に吊るされたぬいぐるみのような物体。ここから伸びたチューブの先に飴が刺さっており、その飴を口の中で溶かす間、口の中に飴を通じて音や振動が伝わってくる。

そしていよいよ、この企画展のメインイベントである“体験”へ。

参加者は写真の通り4つの椅子が並んだブースに案内される。そしてそのこの椅子に身を委ね、天井からぶら下がった器具の先に取り付けられた“飴”を口に含む。そして耳栓をして目を閉じ、外界からの刺激を完全に閉ざす。すると、何が起きるか。

体温で溶け出した飴の味が口の中に広がり始める。ここまでは予想通りだが、耳栓をしているのにも関わらず、ロードノイズのようなザーザーした音が聴こえ始める。というのも、なんと飴から音が出ているのだ。

正確には、音の出処は飴ではなく、飴が刺さっているチューブ。これが飴を通じて口の中に音を出すので、外界の雑音が全くしない中で純粋な音を聴くことになる。このロードノイズのような音は、もしかすると自動車で旅の目的地に移動しているシーンを表しているのだろうか。

音は次第に水の流れる音に変わり、今度は水中を漂っているときに聞こえてくるような音になる。

すると、今度は機器が細かく振動してきた。微弱な電流が流れているような感覚がある。例えは悪いが、リクライニングした椅子で機械を咥えてさらにそれが振動するとなると、思い描くのは完全に歯科治療である。

理由もわからずただただ癒やされる不思議なひととき

レクサス “Journey on the Tongue” 当日報道関係者向けに配布されたキャンディ

歯科治療とは言ったものの、実はこの例え、体験が完全に終了してから考えたもの。というのも体験中は身体を置き去りにして気持ちだけ宙に浮くような気持ちよさを感じていたので、よもやトラウマばかりの歯科治療とは真逆の感覚だった。

美容院などでシャンプーをしてもらう感覚に似ているかもしれない。

水の音を寝る前に聞くと入眠モードに入りやすくなると聞き、実は筆者も実践しているのだが、それに近い感覚でもあった。他に雑音のない中で純粋な自然の音を聴いたのが、癒やされた要因だったのだろうか。

ちなみに飴自体の味も不思議で、ブルーベリーのような風味と淡い甘み以外、まったくもって何の味なのか不明。パッケージにも「狂気と狂喜」というタイトルしかなく、何味なのかは分からずじまいだった。ちなみに原材料を見ると「これがこの味になるの!?」という意外な食材が使われていた。

飴のバリエーションには他に「自由と超越」「野生と瞑想」があり、来場者は体験の中で味わうほか、500円で購入も可能ということだ。

独創的なパフォーマーも登場、振る舞うお菓子は“土の味”!?

レクサス “Journey on the Tongue”
レクサス “Journey on the Tongue” 廣川玉枝氏がデザインした衣装を纏うパフォーマー

なおこの日行われた事前発表会兼パーティでは、参加アーティストの廣川 玉枝氏がデザインした衣装をまとったパフォーマーも登場。同じく参加アーティストの諏訪 綾子氏によるお菓子(?)を来場者に食べさせるというパフォーマンスを披露した。

残念ながら筆者は選ばれなかったので、実際に食べた方に味の感想を聞いてみると「鰹節風味の……土?」という答えが返ってきた。もちろん土ではないと思うが、土を連想させるドライな食感だったという。また他方からはコールタールという単語も聞こえた。言うまでもなく、その食品の食感を表現しているのだろう。

こちらもその味や中身が非常に気になるところだが、残念なことにこちらはこの夜限定。あしからず。

[著者・撮影:チダ ユウタ(オートックワン編集部)]

企画の参加アーティスト

レクサス “Journey on the Tongue” 左から廣川 玉枝氏(衣装デザイナー)、諏訪 綾子氏(フードアーティスト)、evala氏(音楽家)、筧 康明氏(インタラクティブメディア研究者、メディアアーティスト)

※写真左から順に紹介。敬称略。

廣川 玉枝(衣装協力)

SOMA DESIGN Creative Director / Designer。2006年「SOMA DESIGN」を設立。同時にブランド「SOMARTA」を立ち上げ東京コレクションに参加。

「身体における衣服の可能性」をコンセプトにボディウエア「Skin Series」を発表。美しいレースのグラフィックや構築的なドレスウエア、アクセサリー感覚で完成度の高いアートピースはもとより、サウンドや映像表現を駆使したファンタジーでドラマティックなコレクション展開が国内外で評価を得ている。

第25回毎日ファッション大賞新人賞・資生堂奨励賞受賞。ASIAN COUTURE FEDERATION正会員。2017年SOMARTAのシグネチャーアイテム「Skin Series」がMoMAに収蔵され話題を呼ぶ。

諏訪 綾子(アーティスト・food creation主宰)

石川県生まれ。金沢美術工芸大学卒業後、2006年よりfood creationの活動を開始、主宰を務める。

2008年に金沢21世紀美術館で初の個展「食欲のデザイン展 感覚であじわう感情のテイスト」を開催。たべものを人間の「感情」としてあじわう「感覚であじわう 感情のテイスト」を発表する。現在までに東京・福岡・シンガポール・パリ・香港・台北・ベルリン・バルセロナなど国内外で、パフォーマンス「ゲリラレストラン」やディナーエクスペリエンス「Journey on the table」、フードインスタレーションなどを発表している。

2014-15年には金沢21世紀美術館 開館10周年記念展覧会「好奇心のあじわい 好奇心のミュージアム」を、東京大学総合研究博物館とともに開催。人間の本能的な欲望、好奇心、進化をテーマにした食の表現を行い、美食でもグルメでもない、栄養源でもエネルギー源でもない、新たな食の価値を提案している。

evala(サウンド)

音楽家、サウンドアーティスト。先鋭的な電子音楽作品を国内外で発表。

立体音響システムを新たな楽器として駆使し、2016年より新たな聴覚体験を創出するプロジェクト「See by Your Ears」を始動。音が生き物のように躍動的にふるまう現象を構築し、新たな音楽手法としての“空間的作曲”を提示する。

代表作に「大きな耳を持ったキツネ」(Sonar+D, Barcelona 2017) 「Our Muse」 (ACC, Gwangju Korea 2018)のほか、ソニーの立体音響技術Sonic Surf VRを用いた576ch音響インスタレーション「Acoustic Vessel Odyssey」(SXSW, Austin 2018)を展開。また舞台、映画、公共空間などにおいて、先端テクノロジーを用いた多彩なサウンドプロデュースを手掛けている。

筧 康明 (触覚デバイス)

1979年京都生まれ。インタラクティブメディア研究者、メディアアーティスト。

2007年に東京大学にて博士(学際情報学)を取得。慶應義塾大学SFC、株式会社プラプラックス、MIT メディアラボ等での活動を経て、2018年より東京大学大学院情報学環准教授として新たに研究室を立ち上げる。

先端技術を駆使し、人間の感覚・知覚や物理素材の特性を拡張する物理的なインタラクション表現の開拓を行う。工学研究としてのアウトプットのほか、Ars Electronica、SIGGRAPH など国内外で作品展示を展開し、ACM CHI Best Paper Award (2017)、Good Design Best 100 (2012)、平成26年度科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞など受賞も多数。

今回の作品で扱う「触感」に関する近著として、共著「触楽入門 はじめて世界に触れるときのように」(朝日出版社)がある。

企画概要

レクサス “Journey on the Tongue” INTERSECT BY LEXUS外観

■企画名:Journey on the Tongue

■会期:2019年2月27日(水)~3月15日(金)

■会場:INTERSECT BY LEXUS - Tokyo 1F GARAGE

■内容

アーティスト諏訪 綾子さんによる体験型の作品、サウンドアーティストのevalaさん、メディアアーティストの筧康明さんとのコラボレーションによる、フードエクスペリエンスの新作発表。「様々な情景を旅する体験」を体感できる感覚拡張装置を含むインスタレーション作品を展示。

会場詳細

■場所:東京都港区南青山4-21-26

■営業時間

・1F CAFE SHOP & GARAGE:9:00-23:00

・2F BISTRO LOUNGE:11:00-23:00(不定休)

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