<再生への視点 統一地方選を前に>・7 東彼杵郡区 道路整備 進展せずに四半世紀 事態打開へ有料化模索

 遅々として進まない道路に、車を運転していた東彼東彼杵町の男性会社員(36)は舌打ちした。「また事故か」。同町の長崎自動車道東そのぎインターチェンジ(IC)から佐世保市方面へ向かう国道205号は片側1車線で迂回(うかい)路も少ない。交通事故が起きると大渋滞になる。そうでなくても朝夕は混雑し、利用者の不満は大きい。
 問題解消に向け、県と佐世保市、東彼川棚、東彼杵両町などが長年、国に整備を求めているのが、同ICからハウステンボス(HTB)入り口までの約15キロをつなぐ地域高規格道路「東彼杵道路」だ。県北3市4町でつくる同道路建設促進期成会(会長・朝長則男佐世保市長)の調査では、川棚、東彼杵両町民の8割以上が同道路に「期待する」と答え、待望論が根強い。
 佐世保市には別の事情もある。九州各主要都市(人口20万人以上)からそれぞれの県にある空港までの車での所要時間を見ると、同市から長崎空港はワーストの59分。それだけに、同道路を県北地域振興に不可欠なインフラと位置付ける。HTBへの統合型リゾート施設(IR)誘致を進める県にとっても、空港からのアクセス改善は喫緊の課題だ。
 しかし着工への道のりは険しい。1994年に整備検討の対象となる「候補路線」に国から指定されて以降、20年以上進展がなく、次段階の「計画路線」に進めずにいる。県によると昨年4月現在、全国で候補路線は108、計画路線は189。「気の遠くなるような順番待ち」(渡邉悟東彼杵町長)が続いている。
 打開策として期待されるのが、有料道路化による早期整備だ。昨年10月、国の財政制度審議会で、有料道路事業の財源を活用した4車線化の早期整備などが提案され、本県選出国会議員や中央省庁幹部から「有料道路を目指した方が早期着手の可能性が高い」とアドバイスされた。期成会は今月12日に臨時総会を開き、有料道路事業の活用を含めた整備の検討を国に求める決議を承認した。
 一方、有料道路化は川棚、東彼杵両町の生活道路としての役割は薄れ、単なる「通り道」となるリスクもある。ある東彼杵町議は「メリットはない。夢物語のような道路を追い掛けるのではなく、現実的で町民のためになる道路整備のあり方を検討すべきだ」と切り捨てる。東彼商工会の山口博昭会長は有料化提案に同意しつつも、「川棚にICができるのが大前提」とくぎを刺す。各市町で微妙な温度差をはらみつつ、四半世紀たなざらしにされた道路の先行きは依然として不透明だ。

国道205号沿いに立つ「東彼杵道路」の早期実現を求める看板。交通量が多く、住民の期待も大きい=東彼杵町大音琴郷

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