【MLB】「イチは永遠に…」 2打席無安打から元指揮官が読み取ったイチローの思い

試合後に会話を交わしたマリナーズ・イチロー(左)とレンジャーズのドン・ワカマツコーチ【写真:田口有史】

マリナーズ元監督ワカマツ氏がイチローのスイングを絶賛

 マリナーズのイチロー外野手は、オープン戦出場3試合目となった26日(日本時間27日)レンジャーズ戦に途中出場。5回から2打席に立ち、右飛と三塁小フライに倒れて2打数無安打だった。結果は出せなかったが、一塁側の相手ベンチから見つめていたマリナーズの元指揮官、ドン・ワカマツ氏は、これまでとまったく変わらないイチローの鋭いスイングを絶賛した。

 同地区のレンジャーズでベンチコーチを務めるワカマツ氏が警戒感を強め、そのスイングに見入ったのは、5回だった。「3番・指名打者」エンカーナシオンの代打で登場したイチローは、2ボール後の142キロ低め速球を強振する。角度の付いた打球は高々と上がり、フェンス前まで後退した右翼手のグラブに収まった。 

 キャンプ中は許されるベンチ前に置いた椅子に座り、裸眼で捉えた一振りをワカマツ氏が評した。

「紙一重のミスショット。ホームランを逃したねって、そんなスイングだった。パワーがあるのはこの世界じゃ誰もが知ってることだが、まったく衰えてないね。(守備に就かない)指名打者だったから、あのカウントで絶対に狙ってくると読んでいた」

 こう振り返ったワカマツ氏は、09年にマリナーズの監督に就任し、10年途中までを指揮。選手との対話路線を敷き、前年100敗を喫したチームを就任1年目で85勝へと押し上げる手腕を見せた。1年半を同じユニホームで戦って以来、2人の良好な関係は続いている。

試合後には約150メートルを肩を並べて歩いた2人

 8回、2打席目に備えてウエイティングサークルで素振りを始めたイチローが、一塁側へ向けたヘルメットのつばに指を触れて会釈する場面があった。試合後、2本のバットを片手に引き上げるイチローを待ち構えたワカマツ氏は、右翼ポール後方のビジター用クラブハウスまでの約150メートルを肩を並べて歩いていった。

 昨年プレーしない立場になり、今季はマイナー契約から19年目のメジャーを目指すイチローの思いを感じ取った、とワカマツ氏は明かした。

「ハードなトレーニングを積んで体の状態は非常にいいと聞いた。(3月に)日本のファンの皆さんにプレーを見てもらうためもあったと思うが、意欲的に取り組んできたオフのトレーニングが充実していたと言っていた。とてもハードだったようだ。日本での開催試合は、彼にとって、とても意味のあることなんだと僕は感じさせられたよ」

 ワカマツ氏は最後、笑みを浮かべてこう括った。

「イチは永遠にプレーしたいようだ」

 2打数無安打――。かつての指揮官の観察眼には、今のイチローの思いが伝わる打撃がはっきりと映っていた。(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

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