これぞBMWの魂! 8年ぶりにフルモデルチェンジした新型3シリーズに速攻試乗

©オートックワン株式会社

BMW 新型3シリーズ(G20) 330i M sport 走り

車種ラインアップが増えてもBMWの核はやっぱり3シリーズ

3シリーズはBMWの魂だ。

BMW 新型3シリーズ(G20) 330i M sport エクステリア

短い試乗ではあったけれど、8年ぶりにフルモデルチェンジを果たしたこの4ドアセダンに乗って、改めてその思いを強くした。

かつては3シリーズの中にクーペが存在し、生粋の“走り派”たちはこれを選んだ。そしてファミリーを大切にする人々も、BMWのセダンを選ぶことでスポーティなカーライフを送ることができた。

クーペモデルが4シリーズとして細分化されてからは、3シリーズがまるっとDセグメントのクーペ&セダンを総称する呼び名ではなくなったため、若干その存在感が薄れた。けれど、やっぱり3シリーズはBMWの核となる存在だ。

いまや世界の自動車メーカーはフルラインナップ化を目指すようになった。小さなハッチバックからフルサイズセダン、果てはSUVまで全てを取りそろえる「クルマの総合デパート」になることが宿命づけられている。まさにBMWがその先鞭を切って己のラインナップを細分化したわけだが(日本導入モデルだけでも36モデル。グレードで見るとさらに数は増える!)、各メーカーにはその“魂”といえるモデルが存在する。

フォルクスワーゲンで言えば「ゴルフ」。ポルシェで言えば「911」。メルセデスで言えば「Sクラス」。アウディで言えば「A4」。国産メーカーは若干この傾向が弱くなってきているが、陸続きである欧州メーカーには己のアイデンティティを込めた主力車種というものが必ず存在する。

そしてこの3シリーズこそが、BMWの魂なのだと思う。

大幅にアップデートされた新型3シリーズのディテールを写真で見る

BMW 新型3シリーズ(G20) 330i M sport 走り
BMW 新型3シリーズ(G20) 330i M sport 走り

これを感じさせたのは、トコトン計算し尽くされた乗り味だ。

試乗車は2リッター直列4気筒ターボ(258PS/400Nm)を搭載する330i。シャシーが「M Sport」だったことを踏まえても、そのライド感には高級輸入車と呼ぶに相応しい上質感が与えられていた。

確かにランフラットタイヤのコツコツとした入力はある。しかし荒れた路面でも低級な振動はダンパーが上手に減衰し、速度が上がるほどにフラットな乗り心地へとこれを整えて行く。本国にはランフラットじゃない仕様もあるようだから、気になるならばタイヤを履き替えれば完璧だ。

むしろ「Mスポなのにここまでまろやかにしてしまってもよいのだろうか?」と心配するくらい。肝心の走りに精彩を欠くようでは、エクストラコストを払う意味がないからだ。

BMW 新型3シリーズ(G20) 330i M sport イメージ

快適さと回頭性を高い次元でバランスさせたさすがの乗り味

しかしその“肝心な走り”には、完璧に打ちのめされた。

まったり、とも違う。しなやか、というには当たり前に過ぎる。それでいて足回りを固めたことによるハードな突き上げ感や、先々代モデルであるE90型の時代に見られた安っぽいクイックさはまるでない。先代モデルのF30型でBMWは原点回帰を果たしたが、最新の「G20型」ではそこにコクのある操舵フィールが加わった。

お勧めするのは「コンフォート」モードではなく「SPORT」以上のモードだ。

BMW 新型3シリーズ(G20) 330i M sport インテリア

ステアリングを切った瞬間から足回りがその入力を受け止め、微細なロールが始まり、路面にボディがピターッと吸い付くように曲がる。なおかつそのロールを深めて行くほどに、曲がることへの心地良い挑戦が始まる。

上質なダンピングの裏ごし感には、どれほどの時間が掛けられたのだろう? サイズアップしたボディをリアステアなしに体幹で曲げる、BMWのセッティング術。この快適さと回頭性を高い次元でバランスさせる乗り味こそが、現代の“スポーティさ”なのだと思う。

BMW 新型3シリーズ(G20) 330i M sport 2.0リッター直列4気筒BMWツインパワー・ターボ・ガソリン・エンジンは、最高出力190kW(258ps)/5000rpm、400Nm(40.8kgm)/1550-4400rpmを発揮する。

632万円(税込み)という車輌価格に対し、「この値段なら6気筒を積んで欲しいなぁ…」と思ってしまうのは前時代的な価値観か。そんな思いを見越したかのように2リッターの直列4気筒ターボは400Nmのトルクをどこからでも立ち上げ、控えめながらも“フォーン”と心地良いサウンドを響かせて、高回転までこれを引っ張り続ける。

シルキー・シックスが持つ回転上昇感の麗らかさがターボ化によって目立たなくなったいま、スピードよりも五感に響くユニットとして、この直列4気筒のほうが楽しめるかもしれない。日常を楽しむドライビングであれば、MシリーズのようなDCTではなく、トルコンATでも十二分なレスポンスが得られる。

このシャシーとエンジンが織りなすバランスの絶妙さ。突き詰めすぎない性能がもたらす心地良さを表すには、「スポーツセダンの復権」なんて言葉は生ぬるい。

ひとことで言えばそれは、“オジサン殺し”だ。

BMW 新型3シリーズ(G20) 330i M sport センターコンソール上部には10.25インチのコントロールディスプレイが備わる
BMW 新型3シリーズ(G20) 330i M sport センターコンソール上部には10.25インチのコントロールディスプレイが備わる
BMW 新型3シリーズ(G20) 330i M sport センターコンソール上部には10.25インチのコントロールディスプレイが備わる
BMW 新型3シリーズ(G20) 330i M sport センターコンソール上部には10.25インチのコントロールディスプレイが備わる

もちろんスポーティな走りを求めないドライバーにとっては、この徹底して裏ごしされたハンドリングや高回転での跳ね感は、必要のない価値観だろう。それでもアナタがもし330i M Sportのステアリングを握ったら「あっ、運転しやすいな」とか「運転が楽しいな」という直感的な閃きは必ず得られると思う。

BMW 新型3シリーズ(G20) 330i M sport エクステリア

まだまだ後輪駆動は必要なのだ!

ただし家族からは、その絶妙に狭い(笑)後部座席やパッセンジャーシートをして「同じ“3”ならX3にしようよ…」と言われる可能性は高い。

BMW的には先代モデルから全長、全幅、そしてホイールベースをも拡大して世間の常識に対抗したけれど、まだまだドイツの巨漢男子にこのコクピットは小さい部類だと思う。むしろ幅広くなったのは走行性能を上げるべくフェンダーがワイド化されたからではないか? と疑ってしまう。つまりそこには、BMWが3シリーズに掛ける執念みたいなものがある。一見して5シリーズに近づいたように見えるけれど、彼らにとってはこれがまごうかたなき3シリーズセダンなのだ。

BMW 新型3シリーズ(G20) 330i M sport インテリア
BMW 新型3シリーズ(G20) 330i M sport インテリア
BMW 新型3シリーズ(G20) 330i M sport インテリア

だからいくらアナタが「そこが3シリーズのよいところで……」とか「X3はFRじゃないし……ごにょごにょ」とゴネても、きっと分が悪い。こうした流れは世界的な潮流だが、ドイツでは収入に応じて会社からクルマがあてがわれる「カンパニーカー制度」がある分、SUVではなくセダンに乗る層がまだまだ多いのかもしれない。ともかく日本ではセダンの分が悪い。

だがそこを押してまで、新生3シリーズを手に入れることができるドライバーは幸せだ。

そういう意味ではよりパーソナル性が高まる4シリーズの方が、もしかしたら需要は高まるかもしれない。もしくはその利便性を活かしながら、独身男性が敢えてセダンを選ぶのもありだろう。

私のBMW3シリーズにおける原体験は、E36時代の318isだ。当時はこの138馬力しかない1.8リッターモデルが、どうして400万円を超える価格になるのか理解できなかった。あと40万円も足せば、当時の最新スポーツセダンであるスカイラインGT-Rが買えた値段である。

しかしそのハンドルを後年握って、納得がいった。318「is」はマニュアルシフトだったこともあるが、質実剛健ながらも操作に忠実で、よくできたクルマはパワーがなくても運転が楽しいということを教えてくれたのだ。

BMW 新型3シリーズ(G20) 330i M sport センターコンソール上部には10.25インチのコントロールディスプレイが備わる

現行330iはこうしたBMWのコアを受け継ぎながら、あの素朴な乗り味や質素なインテリアに鮮やかさを加え、着実な進化を見せた。

5シリーズよりも先進的な二画面式のTFT液晶パネルを備え視認性と操作性を向上させたことなどは、その最たる例である。

次期2シリーズがFF化されるという話があるように、効率と価格だけを突き詰めれば現代でFR(フロントエンジン・リアドライブ)の必要性はもはやないと言い切ってしまってよいと思う。

しかし運転を愛するドライバーの五感には、その質感はきっちりと響く。

機械式度計を欲しがるような贅沢ではあるかもしれないけれど、まだまだFRは必要な存在であると思えた、心地良い試乗であった。

[筆者:山田 弘樹/撮影:小林 岳夫]

BMW 新型3シリーズ(G20) 330i M sport

BMW 新型3シリーズ スペック