見えぬけれども

 草木の根っこは土の中にあり、目に見えないが、確かに存在する。「星とたんぽぽ」という金子みすゞの詩の一節にある。〈つよいその根は眼にみえぬ/見えぬけれどもあるんだよ/見えぬものでもあるんだよ〉▲問題の“根っこ”は見当たらなかった。学校側の言い分はそういうことらしい。おととし、長崎市の私立高2年の男子生徒が自殺した問題で、弁護士らによる第三者委員会が「いじめが主な要因」とする報告書をまとめたが、学校はそれを受け入れない考えを生徒の両親に伝えたという▲学校側は「事実関係の裏付けが示されていない」のが不服らしい。第三者委を設けた、つまり、第三者の目で事実の解明を求めたのは学校の方であり、調査の結果次第で認める、認めないを言う立場にあるのだろうか、と首をかしげる▲報告書に一片の疑義も挟むべきではない、と言うのではないが、このまま「受け入れない」で済む話とは到底思えずにいる▲問題の根っこを土の中に隠すことなく、あやふやにせず-と両親は、学校がいじめと自殺の因果関係を認め、問題を総括する文書を出すよう求めている▲生徒の父親は「なかったことにされるのが一番悔しい」と会見で語った。真相を見えないものにしてはいけない。あったことをなかったことにしてはならない。(徹)

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