ラミレス監督、4年目の挑戦

©株式会社ニッポン放送

フリーアナウンサーの節丸裕一が、スポーツ現場で取材したコラムを紹介。今回は、オープン戦で今季から取り組むシフトを実践するDeNA・ラミレス監督を分析する。

【プロ野球DeNA宜野湾キャンプ】 キャンプを打ち上げ笑顔のDeNA・ラミレス監督=沖縄・宜野湾 撮影日2019年02月27日 写真提供:産経新聞社

プロ野球は23日からオープン戦が始まった。巨人・菅野、広島・大瀬良らエースの登板もあったが、まだ結果を重視する時期でもなく、実績のある選手は試運転、若手はサバイバルをかけたアピール合戦、という趣だ。

そんななか、DeNAの戦いは興味深かった。ラミレス監督が今季から取り組んでいるシフトをオープン戦で実践し、23日の中日戦で2回アルモンテのライト前ヒット性の打球がセカンドゴロ、続く高橋周平のセンター前ヒット性の打球が遊ゴロと、結果として2つのアウトを奪ったのだ。試合後のラミレス監督は「アナリストがいい仕事をしてくれて、その成果が出ている」と笑顔を見せた。

昨季は見せなかった大胆な戦術だが、メジャーリーグではもはや定番。中継などで目にした人も多いはずで、日本でも認識としては定着して来た。バントシフトや前進守備、ダブルプレーシフトなどに見られる通り、野球では相手打者や状況によって守備位置が変わるのは当然だが、ここで話題にする「シフト」は「二塁ベースより片側に3人の内野手が守る」という守備体系を指す。アメリカでも多くの場合、これがシフトの定義だ。日本では古くは「王シフト」、その後は「松井シフト」が有名だったが、アメリカでも一昔前まではボンズなどリーグを代表する強打者に対してのみ用いられていた。しかし、データ分析の進歩によって、特別な強打者でなくても、打球方向に偏りがある打者に対して積極的に用いられるようになり、その成果も明らかに出て来た。シフトが一気に増え始めたのが2012年。昨季2018年は、11年と比べると10倍ほどに増えた。

極端なシフトにより、野手が簡単にさばく打球が増え、ファンを魅了するようなファインプレーが少なくなるなど、シフトは野球をつまらなくしている、という声もある。強打者の打率は下がり、それならば野手の頭上を越してしまえとフライボール革命へとつながって来た。4年前に就任したメジャーリーグのマンフレッドコミッショナーはシフトを禁止または制限したい意向を持っていると言われる。野球をホームランか三振か、というような大味なパワーゲームにしたくない意向と同時に、現行より打高投低で得点を取り合う野球を志向したいのだろう。

それほどまでに影響が大きなシフトを日本では近年もほとんど見なかったわけだが、今年のDeNAはどの程度の頻度でシフトを行うのか。ラミレス監督は「いいアナリストがいるのでデータを用いている」と話し、いわゆる「シフト」ではなくとも、相手打者の傾向に合わせて、ある程度思い切った守備位置を指示する可能性を示唆している。

現役時代は通算で3割、380本塁打、王貞治さん(現福岡ソフトバンクホークス会長)を超える8年連続100打点という強打者だったが、監督就任後は、データを重視しながらの柔軟で繊細な思考を随所に見せて来たラミレス監督。新しいものへのチャレンジを怖がらないしなやかさが魅力のひとつだ。

2番から宮﨑、ソト、筒香、ロペスと続く球界屈指の強力打線と、球界を代表するクローザー山﨑康晃を擁するDeNA。日本シリーズ進出を果たした一昨年のように左腕王国が復活すればセ・リーグ3連覇の広島を上回る可能性も秘める。新たに取り組む「シフト」が、その投手陣を助けることになるのかもしれない。

今季は出場選手登録も昨年までの28人から1人増えて29人となる日本プロ野球。おそらく各チームが救援投手を1人多く登録することになるだろう。そうなると、昨季メジャーリーグで見られたような「オープナー」という戦術もあり得るのでは? と密かに期待している私は、実現するとしたらラミレス監督ではないかと見ている。

主砲筒香のポスティング移籍の可能性も浮上して来たなか、今季就任4年目のラミレス監督はどんな野球で覇権を目指すのか、興味深い。

節丸裕一(せつまる・ゆういち)
プロ野球実況19年目、MLB実況18年目のフリーアナウンサー。キャンプから、オールスター、日本シリーズ、Wシリーズ、日米野球、WBC、プレミア12など、野球の主要な国際大会の実況、取材多数。