命の多様性を表現 現代美術家イケムラレイコ個展

 ドイツを拠点に活動している現代美術家イケムラレイコ(1951年生まれ)の大規模な個展「イケムラレイコ 土と星 Our Planet」が、東京・六本木の国立新美術館で開催中だ。

 イケムラが探求してきた16のテーマに分けて、彫刻や絵画、映像など約210点を展示。命の多様性と力強さ、はかなさを、自由なイメージで表現する独特の世界観を堪能できる。

 展示室の壁にはイケムラの詩も並ぶ。「自己問答」と題した詩には「手を使って造られるものには/霊を吹き込むことが/できるようだ」「私ではない、造るのは」とつづる。その言葉通り、こねた粘土から生み出された素朴な形の人や生き物の像には、原始的な命が持つ生々しさが漂う。

 ウサギと観音像を融合させた巨大な彫刻「うさぎ観音」は、東日本大震災に衝撃を受け、精神的な危機を乗り越えていく過程で生まれたという。スカートの内部は空洞で、母親の胎内のようだ。

 新作絵画「うねりの春」は、山水画のような風景画の大作。よく見ると、人や動物と山野が一体となっている。生命が高揚するおおらかな春のイメージが、見る者に迫る。

 4月1日まで。火曜休館。一般千円、大学生500円。問い合わせはハローダイヤル03(5777)8600。

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