【インタビュー】ビール好きこそハマる、日本大好き女子が造るサイダー

ビール女子のみなさま、こんにちは! ポートランド在住の東リカです。
ポートランドの女子ブルワーをリレー形式で紹介するこの企画。6人目は、サイダリー「^5(ハイ・ファイブ)」を経営するシャノン(Shannon Kaylee Wolcott Mosley)さんです。

「ビールじゃないの?」と思った方も、お付き合いください。彼女は、ビール好きこそハマるサイダーを造っているのです!

今回は、彼女が働くマクメナミンズ・エッジフィールド(McMenamins Edgefield)の蒸溜所を尋ねました。

shannon hi5 macmenamins

シャノンさん、こんにちは! 素敵な職場ですね。

シャノンさん

街から出て、ここに来ると気持ちがいいでしょう! ここでは、ビール、サイダー、ワイン、蒸留酒を造っているんだけど、私の担当はウイスキーよ。

サイダーではないんですね。

シャノンさん

そう。ここにはサイダリーもあるんだけど、ウイスキーを造らないかって声をかけてもらったの。一緒に働いている人は、ビール造りの経験がある人ばかりで、サイダーの知識も入ったらもっと面白いものができるって考えたみたい。私にとってもいろいろ勉強になって楽しいの。
実は、ビールもカリフォルニアの友達のブルワリーのところで造ってる。学ぶのを止めたら、成長も止まるからね!

蒸留酒やビールも造りつつ、ご自身のビジネスはサイダリーなんですね。サイダー造りを始めたきっかけは何ですか?

シャノンさん

私の家系はアップステートニューヨークに移住したイギリス系で、私が14代目なんだけど、秋になると親戚一同が集まって庭のりんごでサイダーを造る行事があったの。パン作りが趣味だった祖母のサワードウ(種)を内緒で使わせてもらってた。

11歳の時に家族でポートランドに引っ越して、その行事は途絶えちゃったんだけど、オレゴンでは、ワインやクラフトビール造りがとても盛んになってきていて。それもあって、自分が大人になって家でサイダーを造るようになったの。

クラフトサイダー シャノン ポートランド

シャノンさん

実はビールでも良かったんだけど、夫に「ガレージのショップ(趣味エリア)を潰してもよければブルワリーにする」って提案したら、「ショップは譲れない!」って言うもんだから、煮沸が不要で地下室でも造れるサイダー造りを始めたの。

造ってみたら、すごくドライで美味しいものができた。周りにも好評で、結婚式用に新郎新婦を象徴するようなサイダーを造ったりもしたわ。畑で取れたルーバーブといちごのサイダーとか、ものすごく喜ばれたのよ。

それで、ビジネスにしようと?

シャノンさん

大学でビジネスを勉強していたんだけど、面白くなくて。「心から楽しめるサイダー造りを仕事にしよう!」って思ったの。

家族も応援するサイダリービジネス

旦那さんは反対しませんでしたか?

シャノンさん

私がやりたいんなら応援するって。言いなりなの(笑)

ショップ以外は(笑)。「^5」と言うブランド名は一緒につけたんですか?

シャノンさん

そう。いろいろ考えてた時に、ペットのオーストラリアン・シェパードがやって来て、いつものように「ハイファイブ!」ってした瞬間、「これだ!」って閃いたのよ!

夫も私も昔っからのビデオゲームオタクだったから、ビデオゲームで使うハイファイブ「^5」の表記にしたの。でも、ゲーマーは分かっても、「なんて読むの?」って聞かれることも多くて、最近は「hi 5」も使ってる。それも「hi!(やあ)」って感じで好きなの。

ホップサイダー ハイ5サイダー ポートランド

アニメっぽいこのイラストはどなたが?

シャノンさん

^5のサイダーには全てキャラクターを付けているんだけど、デザインは妹。今、中国のアートスクールに講師として行っちゃったんだけどね。彼女に作ってもらってる。

名前には、「Neko」「Kaiju」など日本を意識したものが多いようですが。

シャノンさん

そう。日本好きだから。ずっと日本のアニメに夢中なの。ハローキティーとか最高よ!
^5サイダーは、2016年に商業用ライセンスを取得して生産を始めたんだけど、2017年には日本に輸出したのよ。

日本とポートランドが市場なんですか? なぜ日本を選んだんですか?

シャノンさん

あとシアトルね。それは〜、日本に行く言い訳になるから(笑)。でも、日本へのディストリビューターにも、日本で面白いクラフト飲料が求められてるって言われているの。

クラフトビール好きこそハマるサイダー

アップルサイダー クラフトサイダー シャノン

^5の代表作はどれですか?

シャノンさん

やっぱり「Strawbasaurus Hop」かな。いちごとりんごジュースを一緒に発酵させてホップを加えてあるの。

ホップは「ソラチエース」ってこれもまた日本に縁がありますね!

シャノンさん

それは偶然なんだけどね。最初はシトラホップを考えていたんだけど、高くって。他に何かいいホップがないかって探していた時にソラチエースを使ってみたら、ディルの風味がいちごに最高に合うって分かったの。

サイダーにホップを使うのはなぜでしょうか。ビールを意識していますか?

シャノンさん

ホップはとても香り高く風味豊かなボタニカル。先入観を持つ人が多いけど、ビール以外にも使い道はあると思う。グルテンアレルギーの人が、ホップ入りサイダーをみて「ホップ!ビールの原料よね。グルテン入ってるでしょ」なんて言うのを聞くと、ホップのことを分かってもらわなきゃ!って思うの。

ビール好きの人は、ホップ入りサイダーをどう思いますか?

シャノンさん

例えば、クロスビーホップファーム(Crosby Hop Farm)とのコラボで作った"Hop Herder Cider"は、1バレル(31ガロン)に3ポンド(約1.3kg)ものホップを使った苦みも感じるサイダーで、サイダーだって教えずに飲ませた人は、クラフトビールだと思い込んでたわ。美味しいって。
たまに「サイダーは女子の飲み物」「次の日、頭痛くなる甘いやつ」なんてこと言うクラフトビール好きの男子がいるんだけど、彼らをひっかけるのが楽しいのよ(笑)。だってクラフトビールみたいにクラフトサイダーも、造り手によって味が全然違うってことを知ってもらわないと。

ホップ入りにこだわっているんですか?

シャノンさん

ホップは大好きでこれからも使っていくと思うけど、ホップにこだわっているわけではないの。こだわりがあるのは、高品質の素材。それから、天然酵母に魅了されている。砂糖や濃縮還元ジュースなんかは絶対に使わない。

北西部で初めてサワービールのようなサワーサイダーも造ったんだけれど、固定概念に囚われず、新しい美味しさを追求したいと思っている。

新しい美味しさでデスティネーションに

シャノン マクメナミンズ ハイファイブサイダー

将来の夢は何ですか。

シャノンさん

次のステップは、地下室から街中のもっと広いところへ引っ越すこと。ちょうど市の許可を待っているところなの。
最終的には、田舎に引っ越して、ここマクメナミンズ・エッジフィールドみたいに「目的地」になれるサイダリー&ブルワリーを始めることが夢かな。そこで天然酵母を使ったキレイなドイツ風ビールやびっくりするようなワイルドサイダーを造りたいの。

女性ブルワーはまだ少ないですが、女性であることによって、何か違いを感じますか?

シャノンさん

コンベンションなんかに行くと、男性ブルワーのガールフレンドだろうって思われて、スルーされることが多いとか(苦笑)。セールスを受けなくて楽なんだけどね。女だから真剣に受け止めてもらえないって感じることもたまにあるけど、損するのは相手じゃない? 勝負できる商品があればいいからあんまり気にしてない。

最後に、日本のビール女子へのメッセージをお願いします。

シャノンさん

クラフトビールもサイダーも本当にいろんな種類がある。いろんな質問をして、学ぶことをやめないで欲しい。誰かが、それはどうかなーみたいなことを言っても、聞く必要なんてない。そんな人たちが間違ってるって証明してあげるのは、楽しいわよ!
でも、意地や勉強が主になるのは違うから。楽しく飲めないんだったら、意味がないの!

シャノンさん、ありがとうございました!

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