『40代ご無沙汰女子の、ざんねんな婚活』浅見悦子著 とってもよくできたフィクション(だといいな)

 茶色いカシミアのニットとウールのAラインスカートはトゥモローランドで。イエナのワンピースに、アーバンリサーチのカットソーとティアードスカート。シンゾーンのパーカと、ビームスで見つけた、白のバレエシューズ……。これらがこの冬購入した、所謂「勝負服」でございます。ええ、まぁ、婚活とやらをわたくしめもしておりましてね。それゆえのラインナップでございます。

 そんなわけで書店に行っても、気になる本はどうしたってその手のものになるわけで、本書もまぁ、当然のように手にしたわけで。なんでも「40代ご無沙汰女子」による婚活ルポだそうで。

 ウェブサイト「OTONASALONE」の人気コーナー「40代編集長の婚活記」。本書はその連載をまとめた一冊だ。婚活パーティーで出会ったハイスペ男に年下イケメン、バツ3男、そしてまさかの元カレ(!)まで……。著者である編集者、浅見悦子が一念発起して婚活を開始し、出会った男性たちとのやりとりを通して、自身の恋愛観、結婚観を見つめ直す、というもの。

 本書のなにがすごいって、その正直さ。でも、ただ開示しているだけじゃない。ともすれば「いやそれ、鍵付きの日記帳に書いとけよ」だの「いやそれチラ裏に(略)」だの言われてしまいそうな備忘録と自問自答の羅列なのだけど、読み手をあれよあれよと熱中させてしまう。至極内向的なエンターテイメントに仕上がっているのだ。

 どこがそんなに魅力的なんだろう。登場する男性たちがチャーミングに描かれていることが大きいのかな(そうでない方はそれなりに……)。例えば婚活を初めて二人目にデートをした「メンノンさん」。イケメン年下男子で、目がパッチリ、アパレル勤務の男子の描かれ方がもう、めっちゃかわいい。デートの誘い方が「会えたら会おう」的なゆるーい感じだったのは、実は緊張していたからだとか、初めてのデートで、ビールとか苦いお酒が飲めないって言っちゃうところとか、初めてのデートなのに突然「僕、アリっすか?」とか訊いてくるとか、かわいすぎるだろ!こいつで決めてくれろアサミ!と思わず強く願ってしまうほどに、かわいくて悶絶。キュンとして死。ハッとして!Good、凛として時雨。

 てな感じで、楽しく、気軽に、読み進められる本書。なんだ、け、ど、若干気になるところが。著者のアサミさんは、どういう風に思っているんだろ。ネットとかで調べたら、多分簡単に見つかるであろう媒体に、婚活で出会った人とのやり取りや、彼らに抱いた感想を、包み隠さず開示してしまうことについて。

 メガネさんとかエリートさんとか、ホワイトさんとかモトカレさんとか、もちろん名前は伏せてるんだけど、でも調べようと思ったら、自分のこと書かれてるなってわかるよね?だって浅見悦子さんは顔出ししてるわけだし。

 この本、フィクションだったらいいな。よくできた、臨場感溢れる作り話であったらいいな。これだけ笑って唸って考えさせられる本なんだから、どうか誰も嫌な思いをすることのない本であってくれ。そう思いながら本書を閉じた。

(小学館 1200円+税)=アリー・マントワネット

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