成果なき会談

 朝鮮半島非核化のプロセスはどこまで具体化するのか。もしかすると朝鮮戦争の終結も合意文書に盛り込まれるのではないか。多くの人々の目がベトナム・ハノイでの米朝首脳会談に注がれていた▲だが、トランプ米大統領と金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長の2回目の会談は、目に見える成果を上げることなく終わった。非核化と経済制裁解除を巡る合意は、やはり難しかった▲2人が並んだ映像をあらためて見ると、醸し出す雰囲気はどこか似ている。がっちり厚みのある体つきのほか、きのうの会談前、丸テーブルに片ひじを付いたままメディアの取材に応じる態度も同じだった▲極端な言動で世界を振り回す姿も重なる2人。今回の会談も、核兵器の削減と平和の構築という高邁(こうまい)な理想を実現するためというより、利害や損得が一致したからこその開催というのがあけすけだ▲米国民の目を内政のごたごたから外交面の成果へと向けさせたかったトランプ氏。核を交渉カードにして経済面での実利を引き出したかった金氏。合意にこそ至らなかったものの、対話は友好的な雰囲気だったという▲東アジアに平和と安定をもたらすために、朝鮮半島の非核化は不可欠だ。2人には引き続き交渉の進展が託されている。日本からもその行方を見守り続けなければならない。(泉)

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