長崎県議選まで1カ月 7選挙区 無投票の公算 「選択肢 狭まる」など懸念も

 平成最後の統一地方選の第1ラウンドとなる県議選(3月29日告示、4月7日投開票)まで1カ月を切った。今のところ、全16選挙区の定数46に対し現職、元職、新人計62人が立候補の準備を進めている。4年前の前回は無投票が過去最多の7選挙区を数えたが、今回も同じ数の選挙区で無投票の公算が大きくなっている。人口減少など地方が深刻な課題に直面する中、有権者が古里の未来に1票を託す貴重な機会である県議選。無投票について、関係者や有権者からは「現職に目立った失点がなく対抗馬が出づらい」「競争がないと有権者の選択肢が狭まる」などの指摘や懸念も上がる。
 県議選に向け先月、選挙戦が予想される現職の立候補予定者が支持者らを集めた集会。参加した男性は、その現職の発言にあきれた。無投票の可能性がある同僚県議を引き合いに、「彼は今回も無投票のようです。本当にそのような政治をやってみたいなと思います」と羨望(せんぼう)を込めてしみじみと語ったからだ。男性はくぎを刺す。「素直な気持ちが出てしまったのだろうが、軽率な発言は控えるべきだ」
 28日現在の立候補予定者の内訳を見ると、現職38、元職3、新人21。党派別では自民33、立憲民主2、国民民主5、公明3、共産3、社民2、無所属14(自民に公認申請中の1人含む)となっている。ただ、ほかに出馬を模索する動きもあり、数字は流動的だ。
 無投票の可能性が出ているのは平戸市、壱岐市、西海市、雲仙市、南島原市、東彼杵郡、南松浦郡の7選挙区で、立候補予定者はいずれも自民。報道各社の世論調査で、野党は政党支持率で自民に大きく水をあけられており、無所属の西海市議は「野党は押し切れない。不本意ではある」と悔しさをにじませる。
 ただ、無投票の可能性が高まっている選挙区の現職らはおおむね、「油断禁物」の構えだ。「今でも誰かが出ると思って準備している」「(無投票だと、自分の)人気が見えない」などと重圧も口にする。
 一方、現職や有権者などからは、議員の仕事に魅力が足りないとの声も少なくない。ある現職は「会合、イベント、宴会と一年中バタバタ。議員の仕事はきつい」と漏らす。壱岐市内の30代の自営業男性は「称賛より批判の対象になるのが多い政治家には手を挙げにくい」と語る。
 7選挙区のうち、平戸、雲仙、東彼杵の3選挙区は2011年の前々回、15年の前回と無投票が続いた。無投票の場合、政策論争もなく、有権者の洗礼も受けないまま告示日に当選者が決まる。こうした状況に、南島原市の政治関係者は「不健全な状態」とし、選挙戦は必要だと強調する。雲仙市の元幹部職員の男性はこう懸念する。「市民が政治家という仕事に魅力を感じていない。自らが立ち上がって社会を変えるという気概にまで至らず、無関心の悪循環を招いている」

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