米大統領選のルールは「州議会」が決める?!|無視できない大統領選への州議会の影響

2020年大統領選は女性候補の相次ぐ出馬によって盛り上がっていますが、先日2016年選挙で大躍進したサンダース氏が選挙に出馬することを表明して一層盛り上がっています。
一方で、民主党内の著名政治家の相次ぐ出馬表明の裏で、大統領選をめぐるルール変更が進んでいるのはご存知でしょうか。そして、このルール変更とは、実は、民主党や共和党といった政党や今回選挙に出馬を表明している連邦上院議員によって行われているわけではありません州議会が大きな役割を担っているのです。今回は州議会の大統領選のルール作りに着目して解説したいと思います。

アメリカ大統領選の重要なルールを決めてきた州議会

アメリカ政治ではトランプ大統領の発言が注目を集めていますが、実は日常の政治は州を中心に回っています。というのも、アメリカは連邦制を採用しているために、各州の裁量が極めて大きくなっているのです。例えば、民主党のオバマ政権は医療制度改革を進めましたが、実際にそれを行うのは各州です。そのため、民主党と対立する共和党出身の州知事の中には、政権の意向に沿った医療制度改革を行うことを拒否する人もいました。
州の影響力が強いのは大統領選のルール決めでも変わりません。例えば、今現在大統領選の民主党・共和党の公認候補者を決めるための予備選挙に向けた動きが活発化しています。予備選とは本選挙と同様に資格を持つ有権者が公認候補者を決めるために投票するものです。実は、この予備選の形式は、政党のルール以外にも、各州議会と州知事による立法によって大きく規定されているのです。そのため、大枠としては各州で予備選のルールは同じですが、投票結果に基づく票の分配方法など一部の要素においては各州で違ってくるのです。

現在起きている州議会の動きは…?

このように各州で大統領選のルールを決めてきた歴史がありますが、最近でも注目すべき動きが出ています。特に注目すべきなのは全国一般投票州間協定と呼ばれるものです。先日、コロラド州で同協定を支持する法律が成立しました。この協定は、本選挙の州の勝者を州の投票結果ではなく、全国の投票結果に結びつけるものです。すなわち、コロラド州で負けた候補が全国の投票結果で首位に立てばコロラド州の分の票を得られることになります。同様の動きが各州で進んでおり、現在は全票の3分の1程度まで進んでいます。もし、これが過半数に達して発効すれば、全国一般投票州間協定に加盟する州によって大統領選勝者が決定されるようになるのです。
この方法が各州で模索されるのは2016年の大統領選挙への批判が根強いからです。クリントン氏は一般投票、すなわち有権者からの票の数では勝ちましたが、選挙人制度という独特のルールのもとで選挙全体の勝敗を決める重要州でトランプ氏に敗れたために、選挙全体でも敗れてしまいました。選挙人制度のもとでは一部の重要州が極めて重要な意味を持ち、それ以外の州は軽視されがちです。そのため、それ以外の民主党が地盤を持つ州を中心に、投票結果を一般投票に結び付ける動きが強まっているのです。
また、このような民主党による攻勢は他の面でも強まっています。ニュージャージー州の上院では、大統領選の候補者に納税申告書を公開することを求め、公開しなければその候補者への投票を認めないとする法案を可決しました。これは、トランプ大統領に持ち上がっている納税申告書非公開への民主党側の批判を反映したものです。こちらは下院での可決も必要なため実現は不透明ですが、大統領選ルール決めをめぐる重要なステップと言えるでしょう。

このように、大統領選のルール決めにあたっては各州議会が大きな影響力を持ちます。この動きは政権への支持・不支持と切っても切れないものです。いずれにせよこうしたルールが有権者にとってより良い選挙に結びつくかどうかは注視しなければなりません。

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