WRC:トヨタ、過去2年熱害に苦しんだメキシコ戦へ。マキネン「冷却系については力を入れて開発」

 2019年のWRC世界ラリー選手権に3台のトヨタ・ヤリスWRCを投入しているTOYOTA GAZOO Racing WRT。チームが挑む次なる戦いは今季初のグラベル(未舗装路)イベントとなるラリー・メキシコだ。

 トヨタ陣営のなかでは、1月の第1戦モンテカルロで総合3位、2月の第2戦スウェーデンで優勝を飾ったオット・タナクがドライバーズランキングトップ。チームとしても1ポイント差でマニュファクチャラーズランキングをリードしている。

 両チャンピオンシップをリードした状態で臨む第3戦メキシコは、シーズン初のグラベルイベントで、特に今シーズンから投入した空力パーツなどは、その耐久性が試される。

 競技は最高標高が2737メートルに達する高地を中心に争われる。標高の高いエリアで酸素が薄くなるため、エンジン出力が通常大会から20%程度低下する。また、この時期のメキシコは最高気温が30度前後まで上がるため、熱害対策も重要な要素だ。

2019年から、トヨタ・ヤリスWRCはデンソー製の新ラジエーターを装備

 2017年からWRCに復帰参戦しているトヨタは過去2シーズン、ラリー・メキシコでは主に熱害が原因で上位争いができていない。今シーズンはラジエーターをデンソー製にするなど冷却システムの見直しを図っており、その成果が試されることになりそうだ。

 また、ポイントリーダーのタナクについては競技初日~2日目を先頭走者として戦わなくてはならない。通常、グラベルイベントでは出走順が遅いほど路面コンディションが安定して有利な状況になるため、タナクは不利な状況での戦いを強いられることになる。

 チームメイトのヤリ-マティ・ラトバラとクリス・ミークは、ともにラリー・メキシコを制した経験もあり相性は良好。タナクよりも出走順は遅いため、比較的有利なコンディションで戦えるはずだ。

 ラリーは3月7日(木)、メキシコ・グアナファトで開幕。この日はナイトステージとして1.14kmのSS1が行われる。

 翌8日(金)から本格的にグラベルでの戦いがはじまり、この日はSS2~9までの8SS、9日(土)はSS10~18の9SSが行われる。

 競技最終日の10日(日)はSS19~21の3SSで争われる。最終ステージとなる10.72kmのSS21はステージ上位5名にボーナスポイントが与えられるパワーステージだ。

 4日間合計全21SSの走行距離は313.87km。リエゾン(移動区間)も含めた総走行距離は1003.49kmとなる。

■スウェーデン戦直後にテスト実施。「とてもうまくいった」とマキネン

 チーム代表のトミ・マキネンは「我々はスウェーデンで素晴らしい勝利を手にしたが、メキシコでも良い戦いができると確信している」と自信を覗かせる。

「高い標高と高い気温により、これまではつねに厳しい戦いを強いられてきた。しかし、この1年の間に、そのような状況におけるクルマの信頼性とパフォーマンスの両方を向上させるべく、多くの作業を重ねてきたんだ」

「特に、冷却系については力を入れて開発した。先週スペインで行なった事前テストはとてもうまくいったから、準備は十分にできていると思う」

 ポイントリーダーとしてラリー・メキシコに臨むタナクは「(第2戦)スウェーデンの翌日月曜日から2日間グラベルテストを行なうため我々はスペインに直行した。テストでは多くの異なることを試し、メキシコに向けてできる限りの準備をしたよ。メキシコではきっと競争力があるはずだ」とコメント。

 ラトバラは「ここまでのところ、私が望んでいたようなシーズンスタートとはなっていないが、しかし今回のメキシコではポジティブな要素がある」と述べている。

「それは金曜日の出走順が8番手と、有利な位置からスタートできること。先週はスペインでとても良いテストができた」

「クルマは昨年のラリー・オーストラリアで優勝した時とほぼ同じセッティングで、いくつか小さな調整を加えた」

クリス・ミークはシトロエンに在籍していた2017年、ラリー・メキシコを制している

 これがトヨタ移籍後、初のグラベル戦となるミークは「ここ数年、メキシコでは良い戦いができている。今回は違うクルマだが、再び勝利のために戦えることを願っている」とコメントした。

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