感謝を胸に夢へ一歩 車いすバスケと出合い、成長

 長崎県東彼波佐見町長野郷の県立波佐見高(安藤嘉朗校長、388人)で1日、卒業式があり、3年生149人が巣立った。手足に軽い脳性まひの症状がある商業科の山下修司さん(18)は3年間、車いすバスケットボールに打ち込み、本年度の全国障害者スポーツ大会に出場するなど活躍。自分の足で壇上に登り、証書を受け取るとき、胸に湧いたのは家族や学校への感謝の気持ちだった。
 商業科36人の代表として名前を呼ばれると、クラスメートの助けを借りながら、ゆっくりと、しかし確かな足取りでステージに向かった。
 生まれつきの脳性まひ。日常生活に支障はないが、緊張が高まると思うように体が動かない。「なるべく緊張をしないように」。自分に言い聞かせながら、一段一段進んだ。証書を両手で受け取ると、表情が和らいだ。
 幼少のころからスポーツが好きだった。小学校でソフトボールに熱中したが、手術や治療に専念するためあきらめた。中学では同年代との体格差、体力差を感じ、「思うように体が動かせたら楽しいだろうな」と歯がゆさを募らせていた。
 そんなとき、佐世保市に車いすバスケットのチームがあることを母親から教わった。高校に合格したその日に入団。普段使わない車いすの操作に悪戦苦闘しながら練習に励んだ。試合でノーマークだった状態からシュートを決めたり、相手チームの選手を押さえられるようになったり、小さな成長を積み重ねて自信を得た。病気や障害を恥じたり、悲しんだりせず、胸を張ってプレーする選手の姿に勇気づけられ、スポーツの楽しみを取り戻した。
 本年度の全国障害者スポーツ大会(福井県)や全日本ブロック選抜選手権大会(北九州市)に代表選手として出場。日本車いすバスケ連盟の強化選手育成合宿にも参加している。
 3年間、試合や練習の送り迎えに付き合ってくれた母親、いつも励ましてくれた先生や友達…。「たくさんの人に手伝ってもらって、ここまで来ることができた」。春からは諫早市役所で働く。「少しずつでいいから人の役に立つ仕事がしたくて」とはにかむ。車いすバスケでは、世界大会の日本代表が目標。夢への大きな一歩を踏み出した。

壇上で卒業証書を受け取る山下さん(左)=波佐見高

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