鷹・本多新コーチ、試行錯誤のキャンプも「ちょっと分かるようになってきた」

ソフトバンク・本多雄一【写真:福谷佑介】

今季から1軍内野守備走塁コーチに就任した本多雄一

 宮崎・生目の杜運動公園で2月28日まで行われていたソフトバンクの宮崎キャンプ(キャンプ自体は25日打ち上げ、26日は練習試合3試合を戦った)。シーズンに向けて選手たちが技術の向上、体力の強化に勤しみ、日々練習に汗を流してきた。約1か月に及ぶそのキャンプの日々で、今季、ファンから決まって大きな歓声、拍手、そして時には笑いが起きていた練習メニューがあった。

 それはシートノック。ファンの拍手、歓声の向く先にいたのは、昨季で現役を引退し、今季から1軍内野守備走塁コーチに就任した本多雄一だった。

「嬉しいですよ。辞めても本多コーチ、本多コーチって皆さんが言ってくれますし、本多コーチのノックを見にきましたっていうのとか、色々な声をかけて頂いて。現役辞めても本多雄一という人間を見にきてくれて、正直嬉しいですね」

 現役時代にも、ホークスファンから絶大な人気を誇っていた本多コーチだが、その人気ぶりは指導者となっても健在。キャンプ地でも変わらぬ温かい声援を受けており、本多コーチ自身もファンへの感謝は尽きぬようだった。

 コーチとして“デビュー”した本多コーチ。現役時代の「46」から「80」に背番号を変えて過ごした、この1か月の日々は試行錯誤の日々だったようだ。コーチとして送る初めてのキャンプは「最初は不安もあり、対話だったり、見極めだったりは、選手上がりだから分からない部分もあります。その反面、1年前まで一緒にやっていたからこそ分かる部分もある。ただ、それをコーチングするとはまた違うことだと思うので、難しいですね」だという。

 同期入団の松田宣浩から「本多コーーーチ!」と茶々を入れられるなど展開された軽妙なやり取りは、キャンプ中のシートノックの“名物”となっていた。とはいえ、そこに“なあなあ”な空気はなく、ピリッとした緊張感が漂う。本多コーチは「選手からすると年も近いですし、そういう感じで選手は受け止められている部分と、でもグラウンドに立てば、ピリッとしてくれる。そこのメリハリはさすがだなと思いますね」と、選手たちの頼もしさを改めて感じていた。

数あるノックの中でも「キャッチャーフライが1番難しい」

 指導者に転身し、いきなりの1軍首脳陣への抜擢。昨季まで現役としてプレーしていた身として、コーチの難しさどこに感じているのか? 「A組には8人、9人の内野手がいます。ベテランにはそんなに教えることはないですけど、若い人に携わる時ですね。1人1人、話の受け止め方も違いますし、返ってくる答えも違います。それに対して自分がどうしていこうかな、というところで迷うところはあって。そういうところは難しいなと思っていますね」と本多コーチは言う。

 昨季までは第一線で活躍していた名内野手。これまでキャンプでは、まずはレベルアップ、コンディションの向上と、視線は己に向けられてきたが、コーチとなれば、全選手に視線を配らなければならない。それだけに「今までは自分のことだけで良かったんですけど、若い選手っていろんなものを感じて、いろんなことをしたいと思うので、そういう時は若い時を思い出してどうだったかな、というふうに思っていますね」という。

 これまでは選手として接してきたコーチの立場。コーチとしての気持ちは「ちょっと分かるようになってきたかな」と語る。「まだ1年もやっていないので。コーチになって遠慮した方がいいところはした方がいいでしょうし、出る時はズバッと出ないといけないでしょうし、そこの出たり引いたりというところでの難しさはありますね」とも。

 そして、内野守備走塁コーチとして必須の「ノック」も「難しいです」と苦笑いする。コーチ就任が決まると、オフから“自主トレ”に励んできたものの、まだ難しさを感じている。「数を打って“コレ”と思っても、次の日は(感覚が)違ったりもします。バッティングの方が難しいですけど、ノックはノックで考えさせられる時はある」。バッティングとノックは全くの別物。第一線で活躍してきたからといって、すぐにいい“ノッカー”になれるものではないという。

「全然打てないですよ。ゴロは打てたとしても、アプローチとか、間に落とすとか、そのコースを狙うとか、分かっていても出来ない時があるので難しいです。まだ試行錯誤しながらですね」と語り、数あるノック中でも「キャッチャーフライが1番難しい」という。ノックの技術向上にも励む日々を送っている。

 ソフトバンクは2日の阪神戦からオープン戦をスタートさせた。全部で16試合を戦い、そして2019年シーズンの戦いに備える。3年連続日本一を狙う今季。選手たちの働きはもちろん、“新米コーチ“として奮闘する本多コーチの姿にも注目していってもらいたい。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

© 株式会社Creative2