【世界から】NYより上海、米大企業が方針を変えた理由は

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昨年12月にオープンした「スターバックス リザーブ ロースタリー」ニューヨーク店。3カ月近くたった今も大混雑している(C)Kasumi Abe

 スターバックスコーヒーとナイキ。1980年代以降に生まれた「ミレニアル世代」を中心に世界中で大人気のこの米国発二大企業が展開している新形態の店舗が昨年末に相次いでニューヨークに出店した。

▼スタバの高級ライン

 米スターバックスの新コンセプト店「Starbucks Reserve Roastery」(スターバックス リザーブ ロースタリー)のニューヨーク店がオープンしたのは昨年12月14日のこと。3フロアで構成される広い店内は、ロースタリー(ばいせん所)の名を掲げているだけあって、コーヒーのばいせん機が2カ所設けられている。質がより高く、おいしいコーヒーやコーヒーを用いた飲み物などを提供している同社の高級ラインとなる店だ。客は職人が豆のばいせんをしている過程を見るだけでなく、ばいせんされた豆が客の手元に届くまでの説明を受けることができる。これらのことを通じて、客とスタバとのつながりをより深めることができる場所なのだ。

 「スターバックス リザーブ ロースタリー」は、スタバの本拠地シアトルに2014年に初めてオープンした。以降、17年12月に上海、18年9月にはミラノへ展開しており、ニューヨークは4店舗目になる。そして、今年2月28日には東京の中目黒に5店舗目がオープンした。今後もシカゴなどへの出店が予定されている。

 出店の順番を見ていて、疑問が湧いた。それは「2番目の出店場所として、なぜ上海が選ばれたのだろうか」ということだった。上海よりミラノとニューヨークの方が、同社にとって本拠地のシアトルと同じくらいつながりが深い都市だ。まず、ミラノは創業時からスタッフがカフェやエスプレッソバーの研究で視察に訪れている。そして、ニューヨークは同社を世界的なチェーンに成長させて、昨年6月に最高経営責任者(CEO)を辞任し、現在は名誉会長を務めるハワード・シュルツ氏の生まれ故郷。新業態の店舗をゆかりのあるこれら2都市へ進出することについてはうなずける。だが、創業地であるシアトルに次ぐ出店先として上海を選択した背景には、同社のどのような意図があるのだろうか。

「スターバックス リザーブ ロースタリー」ニューヨーク店で販売しているオリジナルグッズ。上海店では同店限定のグッズが売られている(C)Kasumi Abe

 そこで、「スターバックス リザーブ ロースタリー」ニューヨーク店でジェネラルマネジャーを務めるラウルさんに理由を尋ねてみた。

 「中国はスターバックスが急成長している国です。15時間に1店舗拡大していることからも、大きなビジネスチャンスがあります。現在スターバックスは上海に約600店を展開していて、私たち(の店舗)がある都市の中で最大の店舗数となっています」

 経済成長を遂げる世界最先端かつ、革新的な都市というのが、「スターバックス リザーブ ロースタリー」がシアトルの次として上海の地を選んだ理由だった。

▼ナイキのイノベーション×旗艦店

 一方、米国発世界的企業のナイキも、テクノロジーを取り入れながら顧客にアクティブな体験の場を提供する新コンセプトの旗艦店「Nike NYC, House of Innovation 000」(ナイキNYC、ハウス・オブ・イノベーション 000)をニューヨークの5番街に作り、昨年11月15日にオープンした。

 「000」というナンバリングからはニューヨークが世界初の店舗のように思えるが、実際は違う。昨年10月、「001」が上海に開店しているのだ。同社グローバル・コーポレート・コミュニケーションズ・ディレクターのサンドラさんは、ニューヨークの店名に「000」がついていることについて次のように力説してくれた。

 「『000』は『ゼロより以前』という意味。この新旗艦店の構想が浮かんだ際、私たちスタッフは次世代のリテールを考えると同時に、20年以上前に開いたわれわれの原点であるニューヨークの『ナイキタウン』を思わずにはいられなかった。『000』が意味しているのは、その原点からの通過点、過去から未来へ続く旗艦店のシンボルということなのです。だから、001の上海店はニューヨーク店に続くものなのです」

昨年11月に開店した「ナイキNYC、ハウス・オブ・イノベーション 000」。中には、バスケットボールのコートも設けられている(C)Kasumi Abe

 つまり、ニューヨーク店はあくまでも上海店より先に存在するというのだ。とはいえ、オープン日は前後している。そのことを質問すると「そのタイムラインについては、私たち(スタッフ)は反対でした」とした。おそらくは工事や認可関連などの諸事情で、上海のオープンが早まったか、ニューヨークのオープンが遅れてしまい、結果として自分たちの意思に反してしまったのだろう。

▼東京の復権はなるか

 このように理由はさまざまではあるが、米系企業であっても出店の順番では「中国の上海」が「米国のニューヨーク」に先んじているのが現実なのだ。

 一方、日本人としては日本進出が一歩出遅れているのは気になるところ。世界企業がアジア進出を考えたときに、上海が候補地として第一に上がるのは時代の流れなのだろう。「アジアといえば東京」という時代が、来年の東京五輪・パラリンピックを契機にもう一度やって来るのだろうか。(ニューヨーク在住ジャーナリスト、安部かすみ=共同通信特約)