心安らぐ仏画、患者を癒やす 評判広がり玉野の茂さんへ依頼増

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 病魔に侵された人たちから求められるままに菩薩(ぼさつ)や如来の仏教絵画を描き、惜しみなく譲り渡す仏画師が玉野市にいる。地元で仏画教室の講師を務める茂正隆さん(67)=同市。手掛けた作品に「心が安らぐ」と評判が広がり、増えていく制作依頼に応えようと筆を執り続ける。

 茂さんが仏画を始めたきっかけは、13年前の父の死。父が仏画を習っていた地元の文化施設の同じ講座に通い始めた。10年ほど前からは、真言宗開祖・空海の創建とされる善通寺(善通寺市)で修行を積んだ仏画師・安藤由美子さん(78)=同市=の指導を受けるようになった。

 県内の寺院からも制作を頼まれる茂さんだが、薄地の絹に精緻に色を塗り重ね、掛け軸にして完成させられる仏画は1カ月に2点がやっと。「菩薩や如来の慈悲深いまなざし、かすかなほほ笑みをたたえた穏やかな表情を描くのは毎回、苦心する。心を静め、集中しなければ表現できない」

 依頼は3年ほど前から増えた。年1度の作品展で見知らぬ人からの求めに応じて仏画をその場で譲ったり、がんや白血病などの患者から知人を介して頼まれたりするうち、口コミで広がった。

 悪性リンパ腫などを患う男性(67)=同市=は1年余り前、文殊菩薩を描いてもらった。「物事を悪い方へと考えがちだったが、仏画を見ると気持ちが落ち着き、プラス思考になる。何よりの薬」と手を合わせる。

 増える一方の依頼に茂さんは「ありがたいこと。癒やしとなるように心を込めて描くだけです」と朗らかに笑う。

「仏画が病気で苦しむ人の癒やしになれば」と筆を執り続ける茂さん