太田 耕耘キ(おおた こううんき)- [R18+]映画情報のフリーペーパー『月刊 ぴんくりんく』を作り続ける男

20年以上続くピンク映画情報フリーペーパー『月刊 ぴんくりんく』

──『月刊 ぴんくりんく』は20周年を迎えられたのですよね?

太田:そうなんです。この間ルーフトップを見て驚いたのですが、新宿ロフトと同じなんですよ。『月刊 ぴんくりんく』というフリーペーパーも99年4月号からスタートしているので、実は同じ歳なんです。

──20年間変わらず、ずっとこの形で配布されてるんですか?

太田:全く変わらないです。当初からモノクロのスミ刷りですね。売り上げもないのに20年もバカみたいに作り続けて…狂ってますね(笑)。

──(笑) 一緒に作っているスタッフの方とかはいるのですか?

太田:いや、全部一人でやっています。立ち上げた当初は、なんや面白そうやなぁ言うて5人くらいピンク映画ファンが一緒にやってたりもしたんですけど、2,3年するうちに1人減り…2人減り…かれこれ15,6年は一人でやってます。

──このピンク色が良いですよね。

太田:意外とピンク三色を使い分けてて、桃色とコスモスと桜色の三色のピンクを使ってます。たまに飽きた時は黄色とか使ってます。意味は無いです(笑)。

──『ぴんくりんく』に載っている情報はどうやって集めているのですか?

太田:これは配給会社三社に聞くのもそうなんですけど、基本的に載ってる映画館は全部、映画館側から送ってもらってるんです。今はだいたい全部ファックスになりましたけど、10年くらい前までは電話で聞き取りとかしてましたね。

──資金などはどうされているのですか?

太田:もう全部自腹です。広告も募集はしてるんですけど、めったにくれないんです(笑)。

──太田さんおすすめのピンク映画作品はありますか?

太田:それは難しいですねぇ。正確な数字は分からないのですが、ピンク映画ってこれまで1万本くらいはあるんです。今では一般映画やテレビで活躍されている監督や俳優も、過去に数多くピンク作品があります。例えば、滝田洋二郎監督や瀬々敬久監督、美保純さんや白川和子さん、去年亡くなられた大杉漣さんなど、あげていくときりがありません。まずなにから、と言うことであれば、『色道四十八手 たからぶね』を観て下さい!(笑)

──改めて、ピンク映画というのはどういうものなんですか?

太田:ピンク映画は基本的に100%映倫を通過したものです。ピンク映画というジャンルは別に無くて、普通の映画のR18という年齢指定のものなんです。その下にR15(15歳未満鑑賞禁止)、PG12(12歳未満の方は、保護者の助言・指導が必要)、そしてG(一般)という4つに分かれてますけど、昔はR18かG(一般)どちらかしか分かれてなかったんですよ。

──なるほど…。

太田:映倫に各映画会社が審査に出すわけです。そして、映倫番号を貰った映画でないと劇場公開しないというのが映画の興行協会のルールなんですよ。それは今でもそうです。18歳未満は見られませんという成人指定という枠があって、それを主に上映していた映画館がピンク映画館と呼ばれるようになったんです。全部、呼び方だけの問題です。

──そういうことなんですね。

太田:写真や絵画、彫刻など全ての技術革新の原動力はエロなんです。戦後だけを辿ってみても、より鮮やかに裸が見たいということで、モノクロのフィルムがカラーになったり、さらにそれが動くことで映画になったり。そこから、よりエロチックな映像が見たいという想いで、成人向けのエロ映画という一つのジャンルが出来たんです。

──エロは偉大です…。

太田:最もお金のかからない娯楽っていうのが、エロとホラーなんですよ昔から。怪談と艶話というか。そういうものに対して日本人はおおらかなんです。

──今はエロもホラーも何処でも見られますもんね。

太田:そうですね。そこからさらに、映画館ではなく家庭でも見たいということで、より小さい8mmフィルムが出来たんです。35mmのデカい機械だったら劇場に行かないといけないけど、小さければ家でこっそりでも見れますよね。でもフィルムは巻き戻しするのも大変だってことになって、ビデオテープが開発されたわけですね。どんどん進んでいくんです。

──まさに技術革新ですね。

太田:なぜビデオデッキが80年代に急速に普及したかと言えば、メーカーが販売促進品として、ビデオデッキのおまけにアダルトビデオを付けたんですよ。

──今ではあまり考えられないですね。

太田:それでみんなビデオデッキを買い出して、僕が高校生の時、バイト代を貯めて初めて買ったのが、定価が10万切ったくらいのソニーのベータマックスでした。もう今はベータも無くなってしまったんですけど...。

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ピンク映画50周年記念作品「色道四十八手 たからぶね」

──太田さんもプロデューサーとして関わられた『色道四十八手 たからぶね』について教えてください。

太田:企画自体は2012年に立てました。1962年にピンク映画の第一号が始まったとされているんです。そこから50周年なので、50周年記念でなにか作ろうじゃないかという企画を立てたんです。でも、なかなか配給会社が決まらずグズグズしてる間に1年経ってしまって、いよいよということで2013年に自主制作、自主配給に踏み切りました。

──映画を作るのは大変なのですね。

太田:渡辺護という、美保純さんなどをデビューさせた名監督がいるんですけど、その人の為に準備して脚本も作ったんです。そしたら、なんとクランクイン直前にお亡くなりになってしまって…。御歳82歳でした。どうしようかということになったんですけど、なんとか完成させようということで、脚本を書いた井川耕一郎や、私もそうなんですが、渡辺護の門下生たちが引き継いで完成させたのがこの『色道四十八手 たからぶね』です。

──この作品はどこで見られますか?

太田:これが去年の12月からDVD化されまして、レンタル版はR15で全国のTSUTAYAなどで出ています。レンタル版はセルよりも少しボカシの箇所が多いだけで内容は同じです。 セル版はR18版の劇場公開と全く同じ内容で、メイキングなんかの特典映像も付いてます。ホームページもあるんですけど、そこから通販していただくと、さらに60分の特典映像(主演の愛田奈々さんのロングインタビュー)のおまけも付いてます。

3月21日(木)のイベントについて

──前回のイベントでは色々ハプニングがあったとお聞きしています。

太田:実はちゃんとした8mmの映写機を使うのが初めてで、ぶっつけ本番という感じだったので、フィルムが絡まったりとか思いもよらないハプニングがあって、もう冷や汗タラタラでした(笑)。

──それは大変でしたね。

太田:機械も直さないとあかんし、上映もあったので、喋る時間がなくなってしまって。そしたら、もうちょっと太田さんの喋りが聞きたいという有り難いお客さんからの声をいただいたので、今回のイベントは喋ろうと思ってます。

──今回は映写技師さんもいらっしゃるんですよね。

太田:ちょうどその時に来ていたお客さんが、私が映写をやってあげようかと言ってくれたので、その女性お二人に来ていただけることになりました。

──よりトークに集中できそうですね。

太田:前回は8mmから70mmまで4種類の大きさの上映用フィルムをサンプルとして 持ってきたんですけど、今回は8mmだけに絞って。実は8mmフィルムと言っても、撮影用のフィルムは大きく3パターン6種類くらいあるんですよ。カセットカートリッジの形が違ったり、フィルムの幅が違ったり。それをサンプルで持って来たいなと思ってます。

──では、イベントに興味のある方に一言お願いします。

太田:今回のイベントでは、より8mmについての話と、昭和時代のエロメディアについてなど喋れたらなと思います。『色道四十八手 たからぶね』DVDも特別付録をつけて販売するので、よろしくお願いします。

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