ロッテ岡田氏が栃木で指導者デビュー 一瞬の世界で生きてきた職人が伝えたいこと

ロッテから派遣されているBC栃木・岡田幸文外野守備走塁コーチ【写真:編集部】

1年間、ロッテからコーチ派遣で栃木ゴールデンブレーブスの外野守備走塁コーチ

 昨年限りで現役を引退したロッテの岡田幸文氏がコーチとして実戦デビューを果たした。1年間、コーチ業を学ぶため、ルートインBCリーグ・栃木ゴールデンブレーブスの外野守備走塁コーチにロッテから派遣されている岡田氏は5日に行われた社会人野球の名門・JR東日本とのプロアマ交流戦に臨んだ。

 岡田氏は作新学院、全足利クラブから2008年に育成ドラフト6位でロッテに入団。11、12年にはゴールデングラブ賞を獲得した。俊足で広い守備範囲を持ち、ヒット性の当たりも好捕してきたため、ファンの間は「ざんおか」(残念、そこには岡田がいるの意)、背番号「66」を用いて「エリア66」などと敬意を示す言葉も生まれた。

 新たに任された“エリア66”は三塁コーチャーボックスがメインとなる。栃木でもロッテ時代と同じく背番号は「66」。自軍の攻撃の時は、広い視野を持って、グラウンドを見渡す。ベンチに戻ってくると、寺内崇幸監督と意見交換をする。試合が終わった後はノートを持ってミーティング。試合で大切なこと、感じたことを選手たちに伝えている。

「なかなか、コーチは難しいですね。自分やっていた方が簡単でした(笑)」

 現役の時ならば、自分のことだけを考えておくだけでよかった。しかし、コーチとなれば、自分だけの判断ではいけない。選手の走力を把握した上で決断をしなくてはいけない。これまで感覚で理解していた技術も、相手に伝わるように言葉にしないとならない。これがまた難しい。指導者がぶつかる最初の壁だ。

試合後に選手と話し込む岡田幸文コーチ【写真:編集部】

「NPBに一人でも送り出してあげたい。そういう選手を育ててみたい」

 この日のゲームは栃木が1-3でJR東日本に敗れた。両チームとも投手がよく、引き締まった展開。1点がゲームを左右する流れだった。そんな中、栃木は8回の攻撃で「サインミス」があり、チャンスを逃してしまった。反撃できずに、試合は終わった。

「次の塁を狙うというテーマの中で今、取り組んでいます。ですが、8回、『さぁ、追いつくぞ!』という時にサインミス、スチールでアウトになってしまいました。2点差ならば、まだ試合展開がどうなるかわからない。ただ、終盤でミスをしたら勝負は決まりかねない。終盤に追いつこうとする時のミスを極力減らしていきたいですね」

 起きてしまったサインミスを咎めているわけではない。僅差のゲームでは小さな綻びで、勢いを失ってしまうこともある。一瞬の勝負で生きてきた男だからこそ伝えたいことなのだ。

「初めからそうチームがうまくいくわけはありません。個々の選手が持っているものを最大限に生かせるようにしていきたいですね。アドバイスひとつとっても受け取る選手の感覚は違います。褒めて伸びるタイプもいれば、もっともっと(要求をして)と伸びるタイプもいますから」

 試合後も同じ目線に立って、選手とマンツーマンで話し込む姿も見られた。

「教える楽しさもありますよ。能力ある選手ばっかりなので。NPBに一人でも送り出してあげたい。そういう(自分のようなタイプ)選手を育ててみたいですね」

 ロッテファンは、その類まれなプレーをする岡田氏の存在そのものが自分の誇りと思えた。再び、ファンの心も奪い去るようなプレーヤーが岡田氏の手から誕生することを願っている。(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)

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