独立Lで驚愕の156キロ…元DeNAドラ1北方、NPB復帰への思い「野球が好き」

今季からBC栃木に加入した北方悠誠【写真:編集部】

高卒でNPBも戦力外、挑戦し続ける理由は「野球が好きだから」「諦められないんです」

 独立リーグのルートインBCリーグ・栃木ゴールデンブレーブスからNPB復帰を目指す北方悠誠投手が5日、JR東日本とのプロアマ交流戦に登板した。移籍後実戦初登板で、衝撃の最速156キロをマーク。1回2四死球ながら2三振無失点の投球を見せた右腕は降板後、「野球が好きなので……」と胸中を吐露し、NPB復帰への熱い思いも明かした。

 昨年9月以来の実戦マウンド。7回から登板した北方は1死から四球を与えるも、続く打者を空振り三振に仕留める。2死一塁から死球と暴投で2死二、三塁とピンチを招いたが、最後は力のあるストレートで空振り三振に斬って取った。

 無失点で切り抜けたマウンドで、衝撃の一球もマーク。JR東日本のスタッフの計測によると154キロだったボールが、栃木GBの数値で156キロを記録。速すぎるボールにスタンドが沸いた。

「(156キロ計測した)スピードは聞きました。今の僕はスピードよりも投球術が大事。コントロールを磨いていければ、スピードも出ると思っています」

 課題がコントロールにあることは北方自身も分かっている。だが、小さくまとまってしまっては、魅力は消えてしまう。力のあるボールが確かに戻ってきている――。もう一度、NPBに戻ることを目指し、自信を取り戻しつつある。

野球への情熱は消えずNPB復帰を目指すBC栃木・北方悠誠【写真:編集部】

野球への情熱は消えず「もしかしたらNPBに行けるんじゃないかな」

 北方は唐津商(佐賀)から2012年ドラフト1位でDeNAに入団。2014年に戦力外となり、15年にソフトバンクの育成選手となった。しかし、1年で戦力外となると、その後はBCリーグ群馬や四国アイランドリーグの愛媛を経て、昨年は信濃でプレー。16登板で0勝3敗、防御率7.22だった。

 数球団を渡り歩いても、野球への情熱は消え失せてはいない。

「スピードも戻ってきているし、感覚も年々、よくなってきているので、(NPB復帰を)諦められないんです。今のフォームだとボールが指にかかる感じもよくて、気持ちよく投げられています」

 DeNA3年目の2014年はフォームも崩し、苦しかった。スリークオーターやサイドスローも試し、自分の生きる道を模索した。しかし、本来の姿にはなかなか戻らなかった。今の形にたどり着くまでも、カブスのダルビッシュ有投手やソフトバンクの千賀滉大投手の動画を見て、身体の使い方を自分なりに研究した。自分で長く、暗いトンネルを抜けて、少しずつ光が見えてきた。

「頭と体が一致しない状態が続きました。でも、野球が好きなので……。今は自信がついてきている部分はあります。もしかしたらNPBに行けるんじゃないかなという気持ちは増していっています。高めの真っ直ぐでファウルとか取れるようになれば、ピッチングが幅広くなると思うんです」

 後ろ向きになっている北方の姿はそこにはない。目は輝いている。
 
 栃木ゴールデンブレーブスの寺内崇幸監督は「初めての実戦としては良かったと思います。打たれても次、必ず抑えてやるという気持ちで次に切り替えていければプロの道は開けてくると思います。1年間、怪我をせずに頑張ってほしいです」と背中を押す。戦力として期待し、プロへの道もアシストしていく。

 NPBに再び戻ることは、簡単なことではない。それでも、苦労を乗り越えてきた北方ならば、その可能性を感じてしまう。そんな思いがボールと言葉には込められていた。25歳の夢は終わらない。(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)

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