DFへの巨額投資、エースへの信頼 ペップはマンCをどう変えたのか 

マンCを指揮するグアルディオラ photo/Getty Images

ジョゼップ・グアルディオラはマンチェスター・シティでの3シーズン目を迎えているが、1シーズン目から今ほど調子がよかったわけではない。プレミアリーグ独特のフィジカルを活かしたスタイルに苦労する場面も見られ、最初のシーズンは3位でフィニッシュ。チャンピオンズリーグもベスト16敗退だった。

普通の指揮官ならば自身の哲学が通じなかったところで折れてしまうが、グアルディオラは修正も素早かった。英『Squawka』はグアルディオラがプレミアの環境に適応するために何をしたのか振り返っているが、この修正力こそグアルディオラが世界最高峰の指揮官と言われる理由なのだろう。

まず最も大きいのが最終ラインへの巨額の投資だ。他リーグよりもカウンターに勢いがあるプレミアリーグでは、ラインを上げすぎると一発で裏を取られてしまう危険がある。それに対抗するためには最終ライン裏のスペースを走力でカバーできる機動力に優れたDFが必要となる。グアルディオラは前線以上に最終ラインのテコ入れを重視した。

バンジャマン・メンディ、ダニーロ、カイル・ウォーカー、さらにはアイメリク・ラポルテと、ほとんど全入れ替えに近い大がかりな改革に打って出たのだ。当初は金の使いすぎとも言われたが、グアルディオラ就任当初に比べてマンCの守備は安定している。ウォーカーをセンターバックで起用した時もあり、スピードへの対応に気を遣っていたのは間違いない。またレフティーのラポルテを加えたことはビルドアップの面でも大きかった。補強に高額な資金を投じたが、これがタイトルに繋がるならば文句はあるまい。今季は4冠獲得の可能性が残っており、ここまでは大成功だ。

一方で我慢したケースもある。今でも絶対的なエースであるセルヒオ・アグエロとの関係だ。最終ラインの選手たちには早い段階で見切りをつけたが、アグエロに関しては辛抱強く起用してきた。同メディアは当初のアグエロはグアルディオラのゲームプランに合っているとは思えなかったが、今では組み立てにも積極的に参加するようになったと伝えており、グアルディオラはアグエロを切り捨てなかった。結果的にこれは正解だったと言える。

選手を成長させたという意味ではラヒーム・スターリング、レロイ・サネのウイング2人の存在も大きい。グアルディオラは左利きのサネを左サイド、右利きのスターリングを右サイドで起用しているが、現代では利き足とは逆のサイドで起用するチームも多い。しかし2人がサイドで幅を取ることがマンCの攻撃に活きており、また2人の突破力を活かしやすくもなっている。2人がダビド・シルバら中盤の選手と絡みながら執拗にペナルティエリアの角へ入ってくるやり方は相手DFにとって脅威だ。

今では大量得点を約束できるチームとなり、グアルディオラの影響でプレミアの優勝争いは異様なほどハイレベルになった。プレミアにも勝ち点100時代が到来したのだ。一部では今季のチャンピオンズリーグ優勝候補にマンCを推す声もあり、評価は非常に高くなっている。グアルディオラの下でチームは確実に成長しているが、3シーズン目に4冠の夢は叶うか。

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