“震災から8年”「東日本大震災」関連倒産状況(2月28日現在)

 3月11日で「東日本大震災」から丸8年を迎える。「東日本大震災」の関連倒産は、2011年3月から2019年2月まで96カ月連続で発生し、累計は1,903件(2月28日現在)に達した。
 倒産企業の従業員被害者数は2万9,142人にのぼった。また、全国では島根県を除く46都道府県で関連倒産が発生し、広範囲な影響の大きさを浮き彫りにした。「震災」関連倒産は収束傾向をみせているが、震災の影響から脱却できない企業がまだ多い状況が透けて見える。

震災から96カ月連続で発生、2018年は月平均3.6件

 「東日本大震災」関連倒産(以下、「震災」関連倒産)の年別(1-12月)件数では、2011年が544件、12年490件(前年比9.9%減)、13年333件(同32.0%減)、14年175件(同47.4%減)、15年141件(同19.4%減)、16年97件(同31.2%減)、17年71件(同26.8%減)、18年44件(同38.0%減)と推移。2018年は収束傾向が強まり、2011年の12分の1以下に減少した。ただ、月平均では3.6件ペースで推移して震災の影響を引きずっている。

東日本大震災関連倒産月次推移

「間接被害型」が約9割を占める

 被害パターン別では、取引先・仕入先の被災による販路縮小などが影響した「間接型」が1,701件(構成比89.3%)に対し、事務所や工場などが直接損壊を受けた「直接型」は202件(同10.6%)だった。「間接型」が圧倒的に多いが、「震災」関連で倒産した企業はもともと経営体力が脆弱で、震災が業績不振に追い打ちをかけたことが大きな要因と思われる。
 ただし、2018年は「直接型」(25件)が「間接型」(19件)を上回った。震災の痛手を乗り越え事業再開したが経営が低迷したり、事業停止していた企業がここにきて清算を目的に法的手続きに踏み切るケースが多いとみられる。

倒産企業の従業員被害者数は2万9,142人

 「震災」関連の倒産企業の従業員被害者数は、2019年2月28日現在で2万9,142人に達した。   1995年の「阪神・淡路大震災」は4,403人(3年間で集計終了)で、3年比較で5.3倍、現時点で6.6倍に拡大した。都道府県別では、東京都が9,334人(構成比32.0%)で全体の約3分の1を占めた。次いで、宮城県2,319人(同7.9%)、北海道1,426人(同4.8%)、大阪府1,265人(同4.3%)、栃木県1,217人、岩手県1,119人など8都道府県で1,000人を超えた。
 また、震災で甚大な被害を受けた岩手県、宮城県、福島県の被災3県の合計は4,266人(構成比14.6%)に達する。この倒産企業の従業員数は正社員のみで、パート・アルバイトなどを含んでいないため、倒産企業の実際上の従業員数はさらに膨らむ。

都道府県別の倒産発生率、宮城県が最高の24.1%

 都道府県別では、島根県を除く46都道府県で関連倒産が発生した。1995年の「阪神・淡路大震災」は23都府県で、2倍に広がっている。津波の被害が東北沿岸部から太平洋側の関東まで広範囲に及び、被害の甚大さも重なって影響が全国規模に拡大した。
 都道府県別の倒産のうち、「震災」関連倒産の占める構成比(2019年2月までの累計)では、宮城県が24.1%で最も高かった。次いで、岩手県22.6%、福島県17.3%、山形県10.6%、青森県8.2%と、直接被災した東北が上位を占めた。
 全国倒産の年別構成比では、2011年が5.0%、12年4.0%、13年3.0%、14年1.8%、15年1.6%、16年1.1%、17年0.8%、18年0.5%と低下を続け、収束傾向をみせている。
 地区別では、東北は2011年に23.5%と約4社に1社を占めたが、12年21.5%、13年21.5%、14年14.1%、15年12.8%、16年9.7%、17年9.2%、18年7.2%と落ち着きを見せている。だが、2019年2月までの累計の構成比は15.1%を占めており、全国構成比(2.4%)を大きく上回り、東北での震災の影響がいかに甚大だったかを浮き彫りにした。

東日本大震災関連倒産

産業別件数、最多が「サービス業他」で全体の4分の1を占める

 産業別では、宿泊業、飲食店などを含む「サービス業他」が505件(構成比26.5%)で最多。
 次いで、「製造業」が438件(同23.0%)、「卸売業」が348件(同18.2%)、「建設業」223件(同11.7%)、「小売業」180件(同9.4%)と続く。「サービス業他」は、幅広い業種に影響が及んだことに加え、震災時の消費手控えの影響も大きかったとみられる。
 年別では、震災直後の2011年と2012年は、サプライチェーンの寸断、工場の被災などを背景に「製造業」が最も多かったが、2013年以降は飲食業や宿泊業などを含む「サービス業他」の割合が高くなった。また、従来の顧客先の喪失や縮小を強いられた「卸売業」も構成比を広げた。
 2018年は、基幹産業だった水産加工などの食料品を中心に、製造業が目立った。

業種別最多は、「食料品製造業」

 より細分化した業種別では、「食料品製造業」が117件で最も多かった。次いで、ホテル・旅館などの「宿泊業」116件、「飲食料品卸売業」108件、「飲食店」94件、「総合工事業」93件と続く。
 「食料品製造業」では、津波で工場が全壊し、補助金の活用で再建したものの、計画通りに業績が伸びず破綻したケース、「飲食料品卸売業」では従来の販路を失ない業績不振から抜け出せなかったケース、原発事故の「風評」被害で大幅な事業規模の縮小に追い込まれたケースなどがあった。
 「宿泊業」や「飲食店」は、震災直後の「自粛」ムードが影響した。特に、「宿泊業」は経営不振の企業が多かったところに、東日本大震災で旅行や行楽が自粛され、客数の落ち込みに拍車をかけて経営を支えきれなくなったケースが頻発した。これは被災地の東北だけでなく、全国各地で影響がみられた。さらに、震災で施設が被災したことをきっかけにして、事業継続を断念するケースもみられた。
 「総合工事」は建築資材の不足、人手不足による工事遅延、中止から経営体力を弱める企業が多かった。いずれにしても業績を震災前に回復できなかった企業の破綻が目立った。

形態別では破産が最多、事業「消滅型」が9割

 倒産形態別では、最も多かったのが破産の1,389件(構成比72.9%)だった。次いで、民事再生法が137件(同7.1%)、特別清算が46件、会社更生法が12件の順。法的倒産が1,584件(同83.2%)と8割を占めた一方、私的倒産は取引停止処分が239件(同12.5%)、内整理が80件(同4.2%)だった。
 法的倒産の推移では、震災時2011年の消滅型(破産と特別清算)の構成比が86.3%(341件)だったのに対し、再建型(会社更生法と民事再生法)の構成比は13.6%(54件)だった。
 消滅型の構成比が、2012年86.8%、13年94.1%、14年93.7%、15年95.4%、16年94.7%、17年95.5%、18年95.0%と高水準で推移している一方で、再建型は13年以降、10%台を割り込んでおり、震災の影響を受けた企業の事業再建が難しいことを物語っている。

 「東日本大震災」から丸8年を迎える。政府は復興期間を10年間と定め、2016年度から2020年度までの5年間を「復興・創生期間」と位置付けて復興に取り組んでいる。
 一方、全国の避難者数はまだ約5万2,000人(復興庁発表、2019年2月7日現在)を数え、震災から丸8年の時間を経過しながらも深い傷あとは残されたままだ。
 「震災」関連倒産は収束傾向をたどるが、2018年も月平均3.6件ペースで発生し、震災の影響を引きずる企業が多い実態を映している。
 被災が大きかった東北の被災3県では、報道によれば宮城と岩手は2020年度に復興事業のメドがつく見通しになってきたが、復興の進展に伴い、地域や個人、企業からのニーズは 一層多様化している。2021年3月に廃止が決定している復興庁は、被災地の地元から復興支援の継続を求める声が上がっている。これに応えるように政府は復興庁の後継組織の内容を盛り込んだ基本方針を近々決定する見込みである。
 経済復興には人の増加が必須条件でもある。地域に人が戻り、定住し、地元で仕事を見つけて働く。当然の生活の定着が地域復興の基礎であるだけに、迅速できめ細かな支援体制の確立が望まれる。

データを読む一覧に戻る

© 株式会社東京商工リサーチ