高山真 「羽生結弦は捧げていく」 - 選手の健康・幸福ファーストを......自身の病も綴り願いと祈り溢れる

選手の健康・幸福ファーストを……自身の病も綴り願いと祈り溢れる

平昌五輪ひと月前の前著『羽生結弦は助走をしない』では大怪我で療養中の羽生を労わりつつ、技術面を細かく解説、「他の誰も過剰に上げ下げせず、選手独自の芸術性を語る」という真っ当な手法が光っていた。平昌1年で刊行の本書も、細かい解説交え五輪連覇をたどり、書籍で初めて羽生本人プロデュースのアイスショーについてもカバー。急逝したデニス・テン選手も含めひたすら全員応援を貫く。

著者は肝臓がんを公表している。平昌後に開腹手術、そして1年後にまた本を刊行したことそのものが尊く、「何よりも選手の健康と幸福ファースト」を強く一本の芯とする、人間愛溢れる姿勢に頭が下がる。本書が出て数日後に競泳の池江璃花子が白血病を公表したこともあり、思いが籠もったひと文字ひと文字を噛み締め、願いと祈りを新たにして読んだ。とかく断片的な情報から他人についてわあわあ言いがちな今、改めて根源的な気づきを与えてくれる。(澤水月)

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