トヨタ、WECセブリング初参戦。デイトナ制した小林可夢偉「アメリカでまた楽しいレースができる」

 TOYOTA GAZOO Racingが参戦しているWEC世界耐久選手権“スーパーシーズン”は2019年3月、昨年11月以来およそ4カ月ぶりとなるシリーズ戦がアメリカ・フロリダ州のセブリング・インターナショナル・レースウェイで開催される。1000マイル(約1600km)という距離で争われる今戦もトヨタは7号車と8号車の2台のトヨタTS050ハイブリッドで臨む。

 2018年5月から2019年6月にかけて全8戦が行われるWECスーパーシーズンは、11月に開催された第5戦上海から長いウインターブレイクに入った。

 しかし、チームはこの間にも初めて挑むセブリングラウンドに向けた準備を進め、2月初旬にはトヨタTS050ハイブリッドを持ち込んだ3日間のプライベートテストを実施。テストでは非常に荒れた路面で知られる元空軍基地を転用したサーキットで合計4000km以上を走破した。

 また、セブリングではアメリカの多くのサーキットでみられる、低い壁でガレージエリアとピットレーンが仕切られる方式のピットレーンにも対応する必要がある。このためチームはトヨタ・モータースポーツGmbH(TMG)のあるケルンに同サイズの模型を作り、担当メカニックがピット作業の練習をこなしてきたという。

 そんなアメリカを代表するオールドコースでは毎年、北米スポーツカーの最高峰シリーズであるIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権の一戦に組み込まれる『セブリング12時間』が行われており、2019年は7年ぶりの開催となるWECセブリングとの併催イベントとして実施される。

 このセブリング12時間にはトヨタTS050ハイブリッドをドライブする6人のドライバーのうち半数の3名が過去に出場している。なかでも7号車のマイク・コンウェイは2017年、2018年の2年連続で総合3位表彰台を獲得するなど相性は良好といえる。また、ホセ-マリア・ロペスもGTマシンでの参戦経験を持つほか、8号車では唯一のセブリング12時間経験者であるセバスチャン・ブエミは2017年大会で総合ポールポジションを獲得した。

 なお、LMP1チームとしては今戦が初めてのセブリング戦となるトヨタだが、IMSAシリーズの1992年、1993年シーズンにはファン・マニュエル・ファンジオ2世とアンディ・ウォレスのドライブする『トヨタ・イーグル マークII』が2年連続で勝利を挙げ、IMSA GT選手権チャンピオンに輝いている。

「セブリングでのレースは初めてですので、チームとドライバーにとって挑戦し甲斐のあるものとなるでしょう」と次戦に向けてコメントするのはTMG社長兼TOYOTA GAZOO Racingの村田久武WECチーム代表だ。

「我々は、ワールドチャンピオン獲得とル・マン24時間での連覇を最大の目標として掲げ、このセブリングを含め、残り3つの重要なレースに臨みます」

「セブリング特有の雰囲気について色々と聞き及んでいますので、私自身もこのレースを心待ちにしています。そしてアメリカのファンのみなさまにワクワクするレースをお届けできるよう頑張ります」

■アロンソ「セブリングは特殊なコース。初めて走ったときは本当に驚いた」

8号車トヨタTS050ハイブリッドに乗り込むフェルナンド・アロンソ

 第5戦を終えてランキングトップの8号車組を5ポイント差で追う7号車のコンウェイもまた、1週間後のレースを楽しみにしている。

「セブリングに向かうにあたって、気分は最高潮に高まっている。現在2連勝中の僕たち7号車の好調な勢いをキープし、さらなる好成績さらなる勝利を目指すよ」

「セブリングはチームにとって未知のコースなので、新たな挑戦となるだろう。僕自身はIMSAのレースやインディカーのテストで走ったのでコースをよく知っている。その経験がチームの助けになることを願っているんだ」

「セブリングにふたたび戻れることを楽しみにしているし、良い結果でレースを終えられれば最高だね」

 そんなコンウェイと7号車をシェアする小林可夢偉は「今年、デイトナ24時間レースに参戦したことで、アメリカでのレースにさらに親しみが持てましたし、セブリングでもまたきっと楽しいレースができると思っています」とコメント。

「先月のテストで経験した、昔ながらのコースの特徴は興味深いものでした。路面舗装が荒れていて凸凹が激しく、コース脇には壁が迫っています。ドライバーにとってはとても難しくミスの許されないコースですが、僕は楽しむことができました」

「ただ、このようなコースでコース上の混雑をかわしていくのは大変だと思いますし、それだけにチャレンジングなレースになるでしょう」と冷静な様子だ。

 可夢偉と同じくセブリングでの公式戦は初挑戦となる中嶋一貴は「WECカレンダーの一戦として発表されたときから、セブリングでのレースを楽しみにしてきた」という。

「(実際に)行く前からコースやアメリカのファンについて色々と聞いていました。数週間前に行ったテストは参考になりましたし、現在さらにコースへ合わせるための準備をしていますが、セットアップについてはすでに良い感触を得ています」

「前戦のWEC上海からもすでに時が経っていますが、僕たち8号車は昨年のル・マン以来表彰台の中央に立っていません。それだけに、今度こそは表彰台の中央に立つという強い決意とともにレースに臨みます」と意気込みを語った。

 可夢偉と共に臨んだデイトナ24時間で見事優勝し、その勝利の立役者となったアロンソは同レースの再現ができればいいと考えている。

「デイトナ24時間レースはとても素晴らしい体験だった。あのような伝統のレースで勝つことができたのは本当に栄誉なことだし、今回のセブリングでもその再現ができればと思っているんだ」

「モータースポーツに関してとても熱狂的なアメリカのファンに囲まれていると、まるで母国にいるかのように感じるよ」

「デイトナ同様、セブリングも独特なサーキットで、テストで初めて走ったときは本当に驚いた。クルマにとってもドライバーにとっても厳しく、容易なレースではないだろうが、それだけに正しい準備をし完璧にレースを戦う必要がある。勝つために全力を尽くすよ」

 初挑戦となるセブリングラウンドで今季5度目のワン・ツー・フィニッシュを目指すトヨタ。チームは3月13日(水)から始まるレースウイークの前に実施される9日(土)~10日(日)のWEC公式テストに参加し、15日(金)16時にスタートが切られる1000マイルレースに臨む。

2月初旬に行われたプライベートテストで4000km以上を走破したトヨタTS050ハイブリッド

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