【MLB】憧れのイチローと約12分間“合同アップ” 菊池雄星が過ごす「特別な時間」

約12分間の“合同アップ”を行ったマリナーズ・菊池雄星(左)とイチロー【写真:木崎英夫】

米挑戦の初舞台は「東京」に決定、サービス監督の期待に「イエス!」

 マリナーズの菊池雄星投手(27)が東京開催の開幕シリーズ第2戦でメジャーリーグデビューを果たす。サービス監督は9日(日本時間10日)の朝の会見で正式に発表したが、菊池は前日8日に監督室に呼ばれ吉報に接していた。

 指揮官の期待に左腕は自信を込めた一言を返した。

 サービス監督「日本で投げてもらうが大丈夫か?」

 菊池「イエス!」

 米挑戦の初舞台は「東京」。7年ぶりに日本での公式戦を行うマリナーズに新加入した菊池は「僕の中では2回デビューできる」と、シアトルでの米初登板前の日本凱旋を強く意識してキャンプに臨んでいた。

 キャンプインを翌日に控えた2月11日だった。自分をどうアピールしていくかを問われた菊池は迷うことなく言った。

「日本でやってきたこと以上は出せないと思います。自分が今持っているものをしっかりと普通にやるということ。普通にやることが一番難しいことでもあるので。9年間やってきたものをそのまま出せればなと思っています」

 ここまでオープン戦3試合に登板し2勝1敗、防御率4.00。9回を投げ6奪三振。サービス監督が高く評価したのは「ストライクを取りに行く姿勢」だった。今季、チームは攻守で「ストライク」をテーマに掲げてキャンプに取り組んでいる。打者は積極的にストライクを狙い、投手は果敢にストライクを投げ込む。この戦略にピタリと沿える投球を披露してきた菊池に首脳陣は信頼を深めた。

実現したイチローとの異例の“合同アップ“「適切な形容詞が出てこないんですけど…」

 オープン戦初登板のレッズ戦でストライク率65.5%、2戦目のロイヤルズ戦では79.5%、そして7日(同8日)のレッズ戦では66.7%と安定する菊池。ボールの縫い目の違いからくる違和感にも苦しんできたが、それもうすれてきた様子。「日本の皆さんに頑張ってる姿、成長する姿を見せたいなと思います」。菊池は21日に向けて意欲を高める。

 一つの念願をかなえた菊池に、予期せぬ至福のひと時が待っていた。

 キャンプも終盤に差し掛かり、マイナー行きを通達された選手も出て、日増しに人数が絞られている。この日は敵地でのオープン戦だったため、メンバーに入らなかった居残り組が調整。野手はイチロー他4、5人だった。ブルペン入りを前にアップを初めていた菊池のそばにイチローがなにげに近寄り、約12分間の“合同アップ”が実現した。イチローが話をしながらメニューを行うのは異例中の異例。調整法について時折、イチローが答える声が漏れてくる。

「あんまり適切な形容詞が出てこないんですけど、いつも、すごく特別な時間ですね」

 少年時代からの憧れの存在を真横に、ともに流した汗。筆舌に尽くしがたいのは当然だった。

 日本開催試合の特別28人枠入りすることが濃厚なイチローと菊池の“日本共演”は実現するのか――。

 確かなのは、2人の準備が着々と整いつつあるということ。(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

© 株式会社Creative2