波乱のフォーミュラE第5戦香港:悲運のロッテラー。バードがトップチェッカーもペナルティでモルタラが初優勝

 10日、香港で開催された2018/2019年ABBフォーミュラE選手権第5戦。決勝レースは、サム・バード(エンビジョン・ヴァージン・レーシング)がトップフィニッシュしたが残り2周で起きたアンドレ・ロッテラー(DSテチーター)との接触が審議の対象となり暫定順位となった。2位にエドアルド・モルタラ(ベンチュリ・フォーミュラEチーム)、3位にルーカス・ディ・グラッシ(アウディスポーツ・アプト・シェフラー)が入ったが、その後裁定が下り、バードは5秒のタイム加算ペナルティとなり6位に。そのため順位が繰り上がったモルタラがフォーミュラE初優勝を飾った。

 2016/17年の第3シーズンからレースカレンダーに組み込まれている香港戦はコース幅が狭く、前回大会でもバトルやドラマが多発したが、今回の香港戦はフォーミュラE通算50戦目のメモリアルなレースとなった。

 アタックモードのアクティベーションゾーンはターン6を出た内側に設置。レース中に2度使用が可能で、1回あたり4分稼働する。

 1デイ大会となった今回の香港戦。レース日は朝から雨で練習走行に続き予選も雨の影響でコースがフルウエット状態に。各チームがセッティングに悩まされ、難しいドライビングを迫られるなか、今シーズンからフォーミュラEに参戦しているストフェル・バンドーン(HWAレースラボ)が雨量が少なくなった第4グループに属していた好運も幸いでし、初のポールポジションを獲得。

 2番手には練習走行から好調だったオリバー・ローランド(ニッサン・e.ダムス)、”得意の雨”で好走を見せたロッテラーが3番手、4番手には2018年DTMドイツツーリングカー選手権王者のゲイリー・パフェット(HWAレースラボ)が付けた。

 心配された雨は止んだものの、ウエットからドライへと変わりつつある難しい路面コンディションのなか、現地時間の16時すぎに決勝レースがスタート。

スタート直後の1コーナー。出遅れたアンドレ・ロッテラー(DSテチーター)は順位を死守

 2番手スタートのローランドは1コーナーの進入でバンドーンを抜いて首位に浮上。また3番手のロッテラーはホイールスピンしてスタートが若干出遅れてしまい、4番手に後退する。

 2周目、7番手スタートから好スタートで3番手まで順位を上げていたバードが2コーナーの進入で2番手のバンドーンをパス。

 トップ集団が過ぎ去った直後の2コーナーで、フェリペ・ナッセ(ジェオックス・ドラゴン)がコーナーを曲がりきれずウォールに接触しストップ。後ろを走っていたパスカル・ウェーレイン(マヒンドラ・レーシング)とジェローム・ダンブロシオ(マヒンドラ・レーシング)が避けきれず立て続けに追突、3台がコースを塞いだため、マシン回収のため赤旗中断。

 10分後、レースが中断された残り38分からセーフティカー(SC)先導で、ローランド、バード、バンドーン、ロッテラーの順にフォーメーションラップがスタート。翌周にSCが解除されるとあってほぼ全車がアタックモードに。

 レースが再開された6周目の1コーナーで4番手のロッテラーがバンドーンを抜いて3番手に浮上。一方で首位を快走していたローランドが1コーナーを抜けた直後にまさかのスローダウン。どうやら誤ってフルコースイエローのボタンを押してしまったようで、すぐにペースは回復してレースに復帰したが、10番手まで後退してしまう。

 そして8周目、2コーナーで首位バードのブレーキングミスを見逃さなかった2番手のロッテラーがこれを横目にパス。トップに浮上したロッテラーは悲願のフォーミュラE初優勝に向けてひた走るが、ここからバードとのテール・トゥ・ノーズのバトルが繰り広げられる。

 レースが進むにつれレコードラインが乾きだすとロッテラーとバードのペースは他を圧倒。2人のファステストラップ合戦が繰り広げられ、16周終了時点で3番手バンドーンとの差は8秒に拡大。2人は0.5秒前後の差を維持しながら周回を重ねていく。

■残り2周でロッテラーに悲劇が

雨の予選で2番手を獲得したオリバー・ローランド(ニッサン・e.ダムス)
序盤からアンドレ・ロッテラー(DSテチーター)とサム・バード(エンビジョン・ヴァージン・レーシング)の一騎打ちに

 19周目、4番手のモルタラが2度目のタックモードを使い3番手バンドーンをオーバーテイク。抜かれたバンドーンはその翌周にこちらも2度目のアタックモードを稼働、順位の奪還に向けモルタラを追撃開始。

 しかしバンドーンは21周目にドライブシャフトのトラブルでマシンをコース上に止め、ここでレースを終えてしまう。また6番手走行中のセバスチャン・ブエミ(ニッサン・e.ダムス)もトラブルでピットイン、そのままマシンを降りた。

 そのころ首位を走るロッテラーは2コーナーの進入でアンダーを出し、バードとサイドバイサイドに。だが3コーナーでインを取ったロッテラーは順位を死守。直後にバンドーンのマシン回収のためこのレース2度目のSCが24周目に導入され、バトルは一時休戦。

 残り12分、27周目にレースはロッテラーを先頭に、バード、モルタラ、ディ・グラッシの順で再開。ロッテラーとバードを含めアタックモードを残しているほぼ全車がアクティベーションゾーンを通過、白熱した戦いが再開する。

 SC明けも2人のペースは衰えず、3番手以下に毎周1秒近く引き離す超高速バトルを展開。各コーナーで隙を伺い猛追するバードに対しロッテラーは絶妙なラインどりでトップをキープし続ける。

超接近戦で会場を沸かせたアンドレ・ロッテラー(DSテチーター)とサム・バード(エンビジョン・ヴァージン・レーシング)

 30周目、ローランドがターン7でストップし残り約5分半で三たびSCが導入される。マシンの回収は素早く終わり、残り2分+1LapでSCが解除され、最後のスプリントレースがスタート。

 ロッテラーに初優勝が見え始めた残り2周、35周目の2コーナーでバードがレイトブレーキで進入しロッテラーの右リヤに接触、ロッテラーは姿勢を乱すもなんとか堪える。

 だが直後、ロッテラーの右リヤタイヤにスローパンクが発生。走行を続けるも終盤にタイヤは完全にバーストし、結局14位でフィニッシュ。

 ロッテラーは「今日はすごく良い調子だったよ、不運にも最後に接触を受けるまではね。タイヤとサスペンションを完全に壊してしまったんだ。1日を通じてマシンはすごく速かったから、残念だよ。良かったところを挙げるなら、ファステストラップを出せたことだね。次戦の三亜(中国)は楽しみにしているよ」とDSテチーターの公式ツイッターで回答した。

 トップでゴールしたサム・バードはロッテラーとの接触が審議の対象となり、暫定結果となっている。2位はモルタラ、3位は前戦のメキシコ戦で大逆転勝利を飾ったディ・グラッシがフィニッシュしている。

 そして審議の結果、バードは5秒のタイム加算ペナルティとなり6位に。繰り上がりでモルタラがフォーミュラE初優勝となった。2位にディ・グラッシ、3位はロビン・フラインス(エンビジョン・ヴァージン・レーシング)となった。

 次戦は3月23日、初開催となる中国の三亜で行われる。

左:エドアルド・モルタラ(ベンチュリ・フォーミュラEチーム)、中:サム・バード(エンビジョン・ヴァージン・レーシング)、右:ルーカス・ディ・グラッシ(アウディスポーツ・アプト・シェフラー)
3度セーフティカー(SC)が導入される荒れたレースに

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