黒岩氏、立民への推薦依頼取り下げ 知事選、異例の対応

黒岩知事(資料写真)

 4月の知事選を巡り、現職の黒岩祐治氏(64)は10日、立憲民主党への推薦依頼を取り下げたと明らかにした。同党県連が「推薦」を決めた際、「カジノ反対」などの基本政策で「方向性が一致した」との認識を示したことを「事実と違う」と問題視。支援要請を自ら白紙撤回する異例の対応に踏み切った。

 黒岩氏が初出馬の時からこだわってきた、与野党相乗りによる「オール神奈川」の支援体制にひびが入った格好。県議会で知事を支えてきた主要会派の枠組みも大きく揺らぎそうだ。

 黒岩氏は記者団に「取り下げは非常に心苦しいが、自分の思いと違う政策を認めたと広がると、県民をだますことになる。そこは筋を通さなければいけない」と説明。立民内で県議団と国会議員との間に「隔たりがあると思わざるを得ない」と無念さをにじませた。

 関係者によると、立民は▽原発ゼロ▽カジノ反対▽中学校給食の完全実施-などを重要政策に位置付けている。知事選では同党県議団と知事サイドで「方向性が一致した」として推薦を決めたが、黒岩氏側は「具体的な政策合意はしていない」と否定していた。

 カジノを含む統合型リゾート施設(IR)誘致の是非に関し、黒岩氏はかねて「基礎自治体が判断すれば全面的に支援する」との基本姿勢で、賛否は明言してこなかった。

 黒岩氏への政党推薦は、自民、公明、国民民主の3党でほぼ固まった。立民県議団の寺崎雄介団長は神奈川新聞社の取材に、「党としてIR反対が一つのテーマになっているのは事実」とした上で、「これまでの信頼関係を軸に『推薦』を決めていたが、残念だ」と述べ、党本部への上申を取り消す意向を示した。

 知事選には他に、市民団体代表の岸牧子氏(62)が無所属での出馬を表明。共産党の推薦を受ける岸氏は、カジノや原発への「反対」をはじめ、全中学校での完全給食実施を公約に盛り込んでいる。

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