“次の機会”を失ったウイリアムズの技術責任者パディ・ロウの不可解な去就

 3月15日(金)~17日(日)から開幕するF1第1戦オーストラリアGPで、ウイリアムズにはコースの内にも外にも隠れる場所はない。

 開幕前のF1プレシーズンテストに2日半遅れで到着したウイリアムズ新車FW42は、10チーム中、群を抜いて最も遅いマシンだった。

 ウイリアムズはメルセデスのパワーユニットを使用しており、エンジンが問題ではないのは確かだ。すべての落ち度はシャシーにある。

 ウイリアムズのシャシーの質がどれだけ低いかは、予選ですべてのマシンが同じ燃料積載量、同じタイヤ、同じエンジンモードで走行する際に、コース上ですぐに明らかになるだろう。

 ウイリアムズのドライバーのロバート・クビサは、スペインでの合同テスト終了時に、チームは2019年の最初の数レースをテストセッションとして使わなければならないだろうと語った。

 コース外では、ウイリアムズF1チーム副代表であるクレア・ウイリアムズ率いる上層部は、マシンがこれほどに遅く、チームがこのような苦境に陥っているのはなぜか、というメディアからの質問を避けることはできないだろう。

 その他の大きな疑問は当然ながら、なぜチーフテクニカルオフィサーのパディ・ロウが突然チームを離れたかということだ。チームが公式に発表した理由によると、ロウは個人的な理由から休職しているという。突然、家族が重い病気にでもなったのだろうか?

 メディアは、ウイリアムズの新車に関するすべての問題のために、ロウがチームを去ったのかと単刀直入な質問をするだろう。

■バルセロナテスト期間中は前向きに発言していたパディ・ロウ

ウイリアムズ技術部門の統括をしていたパディ・ロウ

 実際、テスト期間中にマシンの問題によってチーム内での地位が危機にさらされているのではないか、とロウは尋ねられた。

「F1で長年見てきたことだが、物事がうまくいかないと、F1では人を交代させる習慣がある」とその質問に反論するようにロウは語った。

「だがより強力なチームは、それとはまさに逆のことをするのも見てきている。チーム内の困難や問題はそれぞれが学びのチャンスだ。問題を繰り返さないだけでなく、次の機会に向けてもっと強くなるのだ」

 だが、それはウイリアムズの上層部全員の考え方なのだろうか?ロウは上層部から支持を得ていると感じていただろうか。

「心に留めておくべきことは、テスト初日に間に合わなかったチームは我々が初めてではないということだ」

「特に、マシンから多くのパフォーマンスを引き出す必要があるときに、(テストまでに)マシンを用意して走行させるのは信じられないほど難しい任務だ。逆にもし昨年と同じマシンを用意しようというのなら、それは非常に簡単なことだよ」

「マシンの到着が遅れたという状況があった一方で、我々のマシンは信頼性の高い走りを見せている。遅れたことは忘れて、自分たちを強くするためにそこから学ぶのだ」

 窮地に陥ったウイリアムズと、ロウの不可解な去就についての答えのいくつかは、メルボルンで明らかになるだろう。なぜならそこではチームはどこへも隠れることができないからだ。

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